黒いアタッシュケース


すさまじい勢いで、風が下から吹き上げ、地表から何もかもはぎとって舞い上げて行く。
峻険な岩場はただでさえ足場が悪い上にこの強風だ。うっかり気を抜くとたちまちバランスを失って下まで転落してゆきそうになる。
中腹の、ほんの僅かな平らな場所に、男が二人対峙している。
片方は、顔が見えない。真紅のマスクで顔の半分を覆っている。短い髪はびょうびょうと吹きすさぶ風に激しく乱れ、舞っているが、漆黒の衣裳に包んだ細身の身体はふらともせず、腕組みをしたまま、目の前の男に対している。完全に、攻撃のためにのみ鍛え上げられた体だ。人によっては、その体つきと、僅かに覗いた目から、よく手入れをされた兇器を思うだろう。まさしく男は短刀や鞭などの器物と同じだった、人の情を持つものを人というのであれば。
血のように赤い仮面の下の顔は対照的に血の気のない白い顔をしている。仮面の赤は殺した相手の血で染まった結果かも知れないが、彼は自分の血は見たことがなかった。案外、赤くないのかも知れない。
「さて。それを、渡してもらおうか」
温度のない声でそう言って、さあ、というように片手を開いて相手に向ける。
返事がないのは、聞こえなかった訳ではないらしい。かぶりを振って、一歩だけあとじさったからだ。
男はにやりと笑った。いや、口元を吊り上げた。笑顔は人の心を温めるというが、この男に微笑まれても決して嬉しくはならないだろう。若くても、美しくても、男の職業は死刑執行人だ。
「別に、俺はどちらでも構わないぞ。貴様の手からそれを受け取っても、あるいは死体になった貴様の手から、それをもぎ取っても」
冷ややかに口にする言葉は、脅しや揶揄ではなく、本気なのだろう。相手に示した手を優雅に顎に戻して、どうしようかな、というようにすうと指で顎を撫でる。
「これは渡さない。決して」
初めて、口を開いて叫び返した声は、しかしやや情けなく裏返った。渡さない、という決意だけはあるらしいが、果たして声の主がそれをやりおおせるかというと、かなり難しそうだ。
やはり細身で、男にしては随分と色が白く、華奢といってしまっていいような手首や足首を袖口や衣服の裾から覗かせている。優しい印象を与えるすんなりした目鼻立ち、聡明そうな白く広い額は、今は青ざめて、冷たい汗を伝わらせている。ともすると唇が震えそうになるのを懸命に引き締めているが、うまくいかないようだ。細身で、色白で、髪が漆黒の若者、という描写をすれば二人の男はよく似ていることになるが、見た目から受ける印象は随分とかけはなれている。
恐怖か、緊張かでかすかに震えている手が、ずり落ちそうになったそれを素早く抱え直し、大事そうに、胸にだきかかえた。あまり大きくはない、見た目には平凡な、黒いアタッシュケースだ。
やれやれ、と男は口の形だけで言い、
「渡さない、か。ならば、後者のやり方で、俺にそれを渡そうと言うのだな。わかった。ではゆくぞ、智多星の呉」
男は喋りながら、顎の先を撫でていた指をひゅ、と捻った。なにげないと言えるような仕種だったが。―――
きぃんと、耳が痛くなるような高い音が響き渡った。男の目が僅かに大きくなる。
目にも留まらない速さで投げた男の刺刀が、いつのまに構えたのか、呉と呼ばれた男の手で広げられた鉄の扇子に弾かれて、下に落ちていた。
くちもとの亀裂が深くなる。どんどん陰惨な笑顔になってゆきながら、
「やるな、と言って欲しいか?」
呉は返事をせず、身構えたまま、アタッシュケースを更に強くかかえる。
「不案内なことは止めておいた方がいいぞ。頭脳労働者は仲間に庇われて、地下のシェルターで震えているのが似合いだ」
言いながら、ひゅ、ひゅ、と白い軌跡を空に描く。歯の浮くような金属音を響かせて素早く扇子で弾き返しながら、どうしても短刀に込められた力に押されて、つと後ろに下がった。次の瞬間、赤い仮面の男が目の前に来ていた。
「!!」
悲鳴を飲んで、次々と襲ってくる白刃を躱し、扇子で弾き、
「あっ、く、」
躱し切れず切先が呉の腕を、肩先を切り裂き、血を噴き出させた。いや、本来、呉がまともにやりあえるような相手ではない。次第に傷を負い、血を失ってゆきながらも、呉がまだ立っていられるのは、
なぶっているからだ。
仮面の下のくちびるが笑みを刷いている。獲物を殺すこと自体を楽しんでいるのだ。
楽しみは、長い方がいい。
声を出さずに、仮面の男は低く低く笑いながら、少しずつ、呉を切り刻んでいく。必死で立て直そうとするが、男はそれは許さない。遊ばせるように相手をしながら、徐々に、確実に、呉の体力を奪っていく。簪が外れて、髪がばぁっと乱れた。
ついに膝が折れる。そばにあった大きな岩に縋るように、呉は崩れた。男はつまらなそうな苦笑を浮かべ、同時に、どこか遠くから、巨大な機影が近づいてくることに気づいた。国際警察機構の所有する飛空挺のものだ。
「もう終わりか。ふん、つまらん。もっとも、余計なことを楽しんでないですることをしたらさっさと戻ってこい、とうるさい奴もいるがな…では当初の目的を果たすか」
男は一度おさめた刀をすらりと抜くと、無造作に、岩に突っ伏したまま死んだように動かない呉の側に寄ると、呉の長い髪を掴んで引き上げ、喉を掻っ切ろうとした。
その刹那。
「…なに」
目にも留まらない迅さで、呉の細い腕がのびていた。いつの間に隠し持ったのか、錐のようなものが握られていて、男の胸元に深々と突き立てられていた。
「…、…どこに」
「髻の中だ」
そう答えて、呉が唇を歪めた。苦痛を堪えたのか、してやったりと笑ったのかわからない。その顔を思い切り蹴る。細い体が宙をとび、あと少しで下に落ちるというぎりぎりの場所まで転がって、岩に叩き付けられた。
「生意気な…これで」
勝ったつもりか、と言いかけた口から血がこぼれた。
―――赤かった。
罵ろうとした口元が、自嘲の笑みに変わった。巨大な影は今や頭上まで迫っていて、そして、何者かの発するすさまじい意志の波動が、はるか上空から矢のように真っ直ぐに、男を射ているのが感じられる。続いて、意志の持ち主が男目掛けて降ってこようとしていることも。
「楽しみすぎたか。人の忠告は素直に聞くものだな…それはまだ暫く、貴様らに預けおく。大切に保管していろ」
傷の痛みをものともせず、男の姿がなにかで掃いたようにかき消えた。
それとほぼ、同時に、何者かが天から降って来て、男の居た位置に寸分違わず、拳を叩きこんだ。空気が裂ける音がして、数メートル四方の岩が、目に見えない削岩機で破壊されたように粉みじんに砕け散った。が、勿論、拳の持ち主が狙った標的は、消え失せた後だった。
まだ外へ暴発しそうな力を身内になんとかおさめてから、降って来た男はばっと振りかえる。上背のある、中年の男だった。浅黒い肌に、顎鬚と口髭をたくわえている。体つきは、一見痩せているようだが、白いワイシャツの下の筋肉は驚くほど鍛え上げられていて、無駄な肉がないからそう見えるのだということがすぐにわかる。なおも吹き荒れる風に、ピンが外れたネクタイが激しく踊った。
「呉先生!」
低く強く叫んで、男は呉の側へ駆け寄って膝をついた。
朱に染まった胸の上にがっくりと首を垂れて、身動きもしない。体の下にも、血が淀んで、もう駄目なのじゃないかと思わせるに充分な姿だ。そんな有り様になっても、関節が白くなるほど必死で抱え込んだアタッシュケースは、離そうとしなかった。
「呉先生、しっかりしろ!呉先生!」
耳元で強く叫ぶと、かすかに身じろぎをして、顔をゆっくりと上げた。紙のように白い顔に、長い黒髪が乱れてかかっている。失血で霞む目に、男の姿を映し、それがなんとか像をむすぶと、蝋のような顔に波が走り、呉は懸命に声を振り絞った。
「ちょう…かん、…ケースは…」
「君が守ったのだよ。君が持っている、ほら」
声に促され、のろのろと視線を落とし、果たして自分が、急速に力の抜けて行く腕で抱きしめているのが、黒いアタッシュケースだということをなんとか認めた。
呉の、弛緩しかけた顔に、喜びの痙攣がはしった。
良かった。…
守れた、あの方の。
安堵も手伝ってどんどんほどけてゆく意識の中で、辛い自責が、かすかに頭をもたげる。
―――今ここでケースを死守したからといって、あの時何も出来なかった贖罪になど、なるはずもないのだが…
しかし、悲しんでいる時間はもう残っていない。呉はそのことを自覚し、力を振り絞って、笑顔のようなものをつくると、目の前の男に向け、
「ありがとう…ございました…長官…」
このひとの下で働けて、本当に良かった。…でなければ、私は、ただ過去を悔やみ、懐かしみ、己の無力さを罵って泣くだけの十年を送るしかなかっただろう。あるいは、何もかもを放棄して、一人であの方の後を追うくらいか。
今ここで、まがりなりにも、自分に出来ることをしおおせて、ささやかながら満足のようなものを抱いて逝けるのは、このひとに支えられ、助けられながら…
誰かに必要とされる喜びを、教えてもらったからだ。…
そこまで伝える力はもう残っていない。血があふれてくる唇を懸命に、笑みの形にひきとめながら、別れの言葉を述べようとした。自分が最後のひとときに、この人が側にいてくれるなど、信じられないほど幸運だった。…最後にひとつくらい、良いことがあってもいいと、どこかの誰かがはからってくれたのかも知れない…
「あなたの、ぶかに、なれて、わたしは、ほんとうに」
「君が私の部下だというなら」
男の声は決して怒鳴りつける調子のものではなかったが、消えてしまいそうな呉の意識を掴んで、引き戻す力があった。
ぼやけてゆくフレームの中で、男が、黒いサングラスを外したのが映り、呉ははっとした。今まで数度も見せたことの無い素顔を、男は曝して、鋭く強く光る目で呉を真正面からひたと見据えると、
「命令には従ってもらおう。まだ死ぬことは許さん。今ここで終わりにして楽になって、それで何に決着がつくと言うんだ?何も。何も終わってはいない!
死ぬな。生きろ、これは命令だ」
呉の目に、涙が浮かんで、すう、と蒼白の頬を滑った。それ以外、何も感情が表れないので、その涙が、こんなにして呉を失うまいとしてくれる上司への感謝なのか、こうまでなってもまだ楽になることを選ばせてくれない上司への恨み言なのか、男には判断がつかなかったが、
「わかったな、呉先生!」
最後に一言、強く激しく叫ぶと、自分のシャツの袖に歯を立て、びりびりと切り裂いた。
血止めをするつもりらしい。…間に合うんだろうか?
他人事のように、そう思ったのを最後に、呉は気を失った。

音に、一度振りかえると、空色と薄紅色に塗り分けられた巨大な機体が近づいてくるのが見えた。それから僅か後、
「呉先生!」
甲高い少年の声と、若い女の声が同時に背後から聞こえたが、男は振りかえらず、自分の服で作った包帯の端をきつく縛り上げた。
軽い足音が二つ、大急ぎで側まで来る。
「呉先生!…」
しかし、あまりの姿に、少年はそれきり言葉を飲んだ。手で口を押さえているが、その手がひどく震えている。
「銀鈴くん」
「はい」
「これを。呉先生が命懸けで守ったケースだ。君に託す」
血のついたアタッシュケースをしっかりと受け取って、
「長官…呉先生は、まさか」
女の唇と目が、色をなくしている。
「まだ息がある。大作くん、我々をロボで運んでくれ。大至急だ」
「はい!ロボ、来い!早く!」
腕時計に向かって絶叫する少年の声は、もう涙でぐじゃぐじゃだ。小さな主人に応えて、鉄の巨人は、一声高く返すと、あるじたちを運ぶ為にその巨大な掌を差し出した。

「ロボが戻ったぞ!」
誰かの声に、皆はっとして顔を上げた。同時に、通用口が開いて、見る影もなくなった衣服を身に着けた男が入ってきた。腕に、呉の体をかかえている。さっきまで巨人の手の中で一緒だった少年と女が、後に続く。
「長官!」
わらわらと集まってくる。
「呉先生は?」
「呉学人、」
「智多星…」
皆くちぐちに彼を示す呼称を叫びながら近づき、そして、ものいわぬ彼の姿の、あまりの惨たらしさに、各々の表情になって口をつぐむ。
一同から少し離れた床の上に、後ろ手に手錠をかけられた男が座っていたが、その男も思わずといった様子で、顔を呉の姿に向け、表情を凍らせた。やはり長く黒い髪をした、歳の頃は呉と同じくらいの青年だった。全員が黙り、沈黙がおりたその瞬間、
「誰が」
青年の掠れた声が、空間を打った。幾人かが彼を振り返った。
「さあな。黒い服。黒い髪、赤い仮面」
ひどくそっけなく、皆に長官と呼ばれた男は答えた。あの男が誰なのか、彼にわからない筈はなかったが、敢えて名を言うことはせず、
「誰にせよ、君の仲間だろう?」
今ではもうサングラスは定位置に戻っていて、男の感情は誰にも読み取れなくなっていたが、一同は、『長官』がひどく怒っているのを、彼には珍しい意地の悪い口調から感じ取った。若い捕虜は、それきり黙り込んで、さっきからぴくりとも動かない呉を、じっと見つめている。声にならない捕虜の言葉が、口の形だけでつづられた。
―――呉学究。
「長官…呉先生は、いけねえんですか?」
一番近くにいた、ひょろりと背の高い、飄々とした男が、さして悲壮感漂う、といった感じもなく、尋ねた。むしろ隣りの、小山か岩石のような男の方が、青ざめて、二人の顔を見比べている。
「まだだ。
彼の意識がまだあるうちに、生きろと命じた。彼がその命令に従ってくれることを祈る。いや、信じる」
幾人かが強くうなずいた。
「長官!手術の用意ができました、急いで」
医務室に通じるドアが開いて、白衣の男が怒鳴った。踵を返し、そっちへ向かおうとした。その時、呉と一緒に抱えられていた鉄扇子が、床に滑り落ちてばしゃん、と高い音を立てた。『長官』はほんの一拍足を止めたが、すぐに歩を進め、ドアの向こうに消えた。暗い紅色のコートを着た男が手を伸ばし、拾う。くわえた煙草を、口の反対側に移動させ、そろりと開く。鉄扇子は血だらけだった。
「呉先生は、命がけでこれを守ったのよ。BF団から。兄さんたちから」
女が張り詰めた声でぐいと突きつけたのは、あの黒いアタッシュケースで、突きつけた相手は若い捕虜だった。男の目が見開かれ、続いて苦しげに眉がひそめられ、
「それは、父上の悲願だ。…そのためには仕方のないことだ」
「違うわ」
こちらは怒りで、眉をしかめる。向き合った二人の顔立ちが妙に似通っていると、見比べる者がいたら気づいただろう。
「お父様はそんなことを願ったりしない。兄さんの…八つ当たりだわ」
「!」
捕虜は瞬間ひどく激昂した。それが憤りなのか動揺なのか、あるいはそのどちらもなのか、その二つの感情の間で、言葉をなくし、ただ憤然と、自分を兄と呼ぶ女の顔をにらみつけた。捕虜が、何か女の口を封じる言葉を探している間に、女は再び口を開いた。
「兄さんと、呉先生は、あんなに仲が良かったじゃない。二人ともお父様のこと神様みたいに尊敬していて、時々喧嘩したり言い争ったりしても、結局は仲直りした。気持ちがひとつだったからだわ。夜遅くまでいろんな話をして、たまの休みには二人で本屋めぐりしたり、釣りに行ったり」
捕虜の目がついに女から逸れた。言い知れぬ苦痛がそうさせた。思い出は、言われなくても今も捕虜の胸のところで、熱く、懐かしく切なく、内側から彼を苛む。
「私には、仲のいい兄が二人いるみたいだった。兄さんと呉先生は本当にお互いが好きだったわ。それは本当のことだわ…
そして今、その呉先生が死にかけているのは、兄さんのせいだわ」
捕虜を見据える女の目に、見る見るうちに涙が浮かんで、あふれた。
「もし呉先生に、万一のことがあったら、私は兄さんを許さない!」
「ファルメール!」
思わず怒鳴って、女に飛びかかろうとするのを、暗紅色のコートの男ががっちりと押さえつける。実際、止められなくても両手は後ろだし、この特殊な手錠は男が持つ、空間を跳躍する能力も封じていたので、何が出来るわけでもなかった。それに、捕虜は本気で女を殴ったり傷つけたりしようとした訳でもなかった。ただ、黙って聞いているのがいたたまれなかった、というだけだったのだろう。
女の方も他の連中が抑え、宥める。呉先生はいけないのか、と尋ねた男が、
「まあ、落ち着けや、銀鈴」
それだけ、やはりあまりにさりげない口調で言うと、な、と付け加えて、肩をぽんと叩いた。それがスイッチだったように、女は片手で顔を覆うと、声を出さずに泣いた。
少年が真っ青な顔で、女の横顔を見つめている。
数刻、だれも動かず、何も言わない時間があった。それを切り裂くように警戒音が叫び出す。
『何者か…二名です!違う、別働隊も入れて三名、侵入者です』
「ち、嵩にかかってきやがって。泣いてるヒマはねぇぞ。呉学人の苦労を無駄にしねぇためにも、気合入れて行くぞ、銀鈴!」
「はい」
打てば響くように応え、女は涙を払い、ばっと外へ出てゆく他の仲間たちの後を追った。
「鉄牛、そいつは尋問室にぶちこんどけ」
「へい、兄貴」
ぐい、と引っ張られて、よろけながら立ち上がった男は、ただ、何も無い自分の前の空間を見つめている。
灰色に続く長い廊下に、穏やかで優しく、知的な父の懐かしい笑顔が浮かび、それから、兄弟のように仲の良かった男の、十年前に別れた時の驚愕と恐怖、それから自分を必死で案じている顔を思い描いた。その両者にだぶって、ついさっき見た血だらけの男の横顔が浮かぶ。
『もし呉先生に万一のことがあったら』
呉先生?
誰だって?
わたしは父上の無念を晴らさねばならないのだ。それは、呉学究ならわかってくれる筈だ。
呉学究がここにいてくれたら、私に賛同し、私に協力してくれるだろう。
―――だって、呉学究と私は、同じものを目指していたのだから。
心がひとつだったと、ファルメールも言っていたではないか。
誰が私を責めようとも、呉学究ならきっとわかってくれる筈だ。
父上の無念を、晴らさねば、…ならないことを。
若い捕虜は、やがて血が出るほど唇をかむと、強く目を閉じて、自分に向かって微笑みかける父と、兄弟のように仲のよかった男の笑顔を、まぶたの裏のヴィジョンから追い出そうとした。
しかし失敗した。

[UP:2001/9/29]

うー、お怒りの声天地に満つのが聞こえるようですが…
赤い仮面は謎の人、はこんなに弱くないだろうとか。
山田太郎目の先生はこんなに弱くないだろうとか。
彼女が皆の前で彼を兄呼ばわりするのは不自然だとか。
あとはなんだろう。まあその、自分でもそう思うんですけどね。あんまり怒らないでたまにはこういうのもくらいに思って下さい。すみません。


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