もともとははるかな昔、白い巨塔で知られた二枚目俳優が司会をした週一番組だ。その後山○崇という、なにかというと平賀源内役ばっかりやっていた目の怖い俳優にバトンタッチし、時は流れる。
そして現在では、季節ごとのスペシャル番組になっている。インテリとして知られている、もしくは「今はそう思われていないが、実はインテリだと認知されたい」面々がチームを組んで、戦い、所詮大したインテリではないことを露呈する。
現在の司会は、ゆくゆくはかくし芸大会でマチャ○キの後がまを狙っている、まあ結構いろいろなことが出来ることを証明している割にどうもカメラ映えのしない中山デデユキという男だった。いかにもアシスタント然とした娘と二人、SFチックな奇抜なコスプレをして、
「人生は時間との競争です。クイズ・ターイムチョップ!」
並んでチョップするポーズをとった。ぱちぱちと拍手が起こった。
「はい。始まりましたクイズ・タイムチョップ。今日は国際警察機構北京支部の皆さんと、BF団所属十傑集の皆さんの因縁の対決です」
客席からガンバレーと声がかかる。かけたのはBF団の応援席だ。覆面軍団の中にイワンとサニーが居て手を振っている。
「GO!GO!十、傑、集!国警た、お、せー!オウ!どんどんどんどんぱふぱふぱふ」
見事に一致団結している。一方、国際警察機構の応援席では、村雨とディック牧がそれぞれ、場内禁煙だというのにタバコを吸いながらずぅーっと話し込んでいて、こっちなど見もしない。あとは大塚署長が場内飲食禁止だというのにもくもくとお菓子を食べ、オレンジジュースを飲んでいる。
「なんだあいつらはよ。何しに来やがったんだ」
戴宗がぼやいた。
「まぁでも、あんまり応援されると緊張しますから、あのくらいで丁度いいですぜ」
鉄牛はもうすでにすっかり緊張している。顔が青い。下痢を必死で堪えているような顔色だ。
「では先攻のリーダー中条さん。トップバッターは誰にしますか」
皆、ワクワクとドキドキの混ざった顔で中条の横顔や、側頭部や、後頭部の白髪を見つめている。
自分が最初に選ばれたらどうしよう。前に出て一分後に自分がくるくる回って解答権がBF団に移るってのはちょっとでかい。査定にすら響きそうだ。でも全問正解なんかしたらいきなりヒーローだ。その快感を味わってもみたい。ボーナスにも関係してきそうだ。
鉄牛だけは「選ばねえで下さい」と小声で言いながら手を擦り合せて拝んでいる。どの道選ばれるんだから、責任の少ないうちに選ばれた方がいいのよ、と銀鈴がささやいた時だった。
「草間大作君だ」
「えっ」
皆驚いて中条を見、それから一番前の席の大作を見た。大作はほっぺを赤くして、中条の前にたたたと来ると、
「大事な問題に、僕を選んでもらって、光栄です中条長官!」
張り切って叫び、解答席に走って行った。
「では中条さん、カードを一枚引いて下さい」
差し出されたカードを一枚引く。見ると「Wアップカード」と書かれている。
「おっ!ラッキーですねえ。この問題で得た得点は倍になりますよ!さあその重大な責任を、大作君は果たせるかどうか!」
心のこもっていない煽りナレーションを聞きながら、呉がそっと、
「長官、大丈夫でしょうか。一問目である上にWアップです。もし失敗したらと思ってしまって、どうしても緊張するのでは」
隣りの席で呉が囁く。中条は、
「大丈夫だよ呉先生。大作君はもしかしたら全問正解する」
低い声で言った。
そんなに確実だろうか、何故大作君で?と懸念する呉の周りでは、落ち着けよ大作よぅ!あたしがついてるよ!心頭を滅却すれば椅子も回らんぞ!俺じゃなくて良かったー!大作くんしっかり!等叫んでいる。と、隣りの十傑集からは、まだほんのガキじゃないか。あんなのに頼るようじゃ国警も終わりだな。おうちに帰ってママのおっぱいでもしゃぶっておネンネしてな。だのといった、アメリカングラフィティにでも出てきそうなヤジが飛ぶ。
「うるせえぞこの、ピーーーーー野郎どもが」
戴宗が口汚なく罵る上にピー音が入った。デデユキが顔をひきつらせて、
「いけませんねえ戴宗さん。音声さんが忙しいですからその手のことはひかえて下さいね」
大作は緊張の面持ちで椅子に座り、体を固定した。うぅーんと椅子が上昇して行く。ぱちぱちぱちぱちと拍手が起こった。
気が違ってるんだろうかと思うようなド派手なマント、リオのカーニバルにも出られそうなキンキラの衣裳を身に着け、そしてその衣裳にも負けない、太いマジックでなぞったようなワッペン顔の中堅特殊俳優が、ゴージャスな仕種でマントを翻し、
「今日一人目の挑戦は国際警察機構最年少のエキスパート、草間大作君です。大作君どうですか気分は」
「ちょっと上がってますけど、大丈夫です!」
はきはきと答える。ホッペが丸く赤い。
「そうですか。実はここで番組から君に、感動の対面を用意しているんですよ。誰かわかるかな?」
「い、いいえ…」
思わぬ展開に大作がうろたえる。特殊俳優はにっこり笑った。ビックリ人形みたいな顔だ。
「では出題係の、草間さん!」
『こんばんは。草間です』
大作は仰天した。
「おとうさん」
声は穏やかに答えた。
『大作。元気そうだな』
「どこにいるの。どこで喋ってるんですか」
『音声室だよ、大作。大きくなったなあ』
大作は泣き出した。皆もらい泣きしている。BF団は全員ケッとか言ってるかと思えば、結構目を潤ませている者もいる。
「マイク越しの親子の再会か。切ないのう」
「我貰泣」
「苦労した子は好きだな、大作くん」
意外なところまでほろりときている。
ハナをすする音の中で、大作が泣き叫ぶ。
「おとうさん!僕あれから…一生懸命頑張ったんです。僕の手を握って死んだおとうさんのためにも、僕が頑張らなくてどうするって!いろんなことがあったんです。僕をかばっていっぱい人も死んだし、僕自身もう全部諦めちゃおうかと思ったこともあったし」
いつの間にか周りが暗くなって、大作にピンスポットが当たっている。
大作はここでキッと顔をあげた。
「でも、戦いの中で僕わかったんです。僕は一人じゃない。みんなで一緒に戦ってるんだって」
頬を流れる涙が照明にキラキラ輝いている。
「おとうさんの残した宿題は僕まだわかりません。幸せは犠牲なしに得られないのかどうか。でもきっといつかその答えを見つけてみせる」
いつの間に用意したものだか、ここでちゃらららら〜と感動のBGMが入った。もう客席も国際警察機構も涙なみだだ。戴宗と鉄牛がお互いをぽかすか叩き合って泣き、楊志と一清は抱き合って泣き、呉と銀鈴は手を取り合って泣いている。中条だけは静かなままで「よし」とか言っている。
BF団の方はそれぞれで度合いが違うが、けっ下らん、と言っている者の目に光るものがあったようななかったような。勿論、心底下らなくて眠くなって欠伸をして涙が出ている者もいる。
「いい加減で番組の本筋に戻れ。これは御対面ものじゃないだろうが。バカが」
アルベルトが吐き捨ててから隣りを見ると樊端が号泣しているのでなんだかイヤーな気持ちになった。
ワッペン俳優がにこにこ顔のまま、
「本当によかったですねえ。終わったら後でゆっくり、お話をして下さいね。では大作君、問題に行きますよー」
「はい」
涙を拭いて、大作は居ずまいを正した。
「それでは参ります。草間大作君への、問題です。クイズ・ターイムチョップ!」
司会二人がポーズを取った。
「わんー」というような効果音の後、照明が落ちてサスペンスフルな空間が演出された。同時にチッチッチッチというセコンドの音が入り始めた。
大作の顔がさっと緊張する。
草間博士の声が問題を読み始めた。
『草間大作の好きな食べ物はなに?』
大作の顔がぱっと明るくなった。
「ハンバーグです!」
ぽんーとオレンジ色の正解ランプがついた。五秒のち次の出題が、
『草間大作の好きなロボットはなに?』
「ジャイアントロボです!」
ぽんーとランプがつく。
皆、微妙に曖昧な表情になってゆきながらなりゆきを見つめている中、中条だけがかすかにうつむいた。その顔が苦笑したような気がして呉ははっとし、目をこすったがその時には見慣れた無表情な横顔でしかなかったが、思わず呼びかけていた。
「長官…」
「思った通りだよ」
低い低い声で囁く。呉にしか聞こえない声で、
「番組側がこんなうまみのあるネタを放っておく訳がないだろう。なんとしても大作君に全問正解になってもらいたいに決まっている。その方が絶対に盛り上がるだろう?椅子が回るなんてもってのほかだ。せっかくの演出が台無しだ」
はあ、と掠れた声で相槌をうつ相手に、
「草間博士との再会セレモニーを番組で用意していた時点で、こうなるだろうなと思ったよ。私は」
オトナな思惑が行き交う民放テレビ局のスタジオで、大作の問題はどんどん進んで行く。30秒経つとなにやらおっかなくてあせらせるBGMもかかってくるが、大作は自信満々だ。これまで全問正解なのだ。どれもこれも『草間大作の好きな』で始まる問題ばかりだから当然だが。
たまに違うものがあっても、
『ジャイアントロボの別名をアルファベット二文字と数字一文字で』
「GR1です!」
『前の問題は6問目だったけど、今何問目?』
「7問目です!」
『では今何問目?』
「8問目です!」
これってクイズなのか?な問題を全問正解のまま最後まで来た。大作の背後の、十二分割された円形のパネルが、一つ残して全部輝いている。
『大作に、腕時計と未来を託したのは…誰…?』
声が泣いている。大作も泣きながら叫んだ。
「おとうさんです!」
ぱぁーとパネルが全部ともって、くるくると光が回った。紙ふぶきが舞って、一同にはわからないがテレビ画面には「パーフェクト!」の金飾文字が躍った。
「やった!おとうさん!」
『大作。立派になったな』
と、今度ばかりはさすがに情も感動も吹っ飛び、これまで堪えていたのか呆れて動けなくなっていたのか、この時ようやく動けるようになったらしいBF団から、
「ふざけるな」
「バカにしてるのか。殺すぞ」
「誰の許可を得てこんなものを見せた」
等々、すさまじいブーイングと、ハマキだの手裏剣だの虫だの銅貨だの鈴だの凧だの指ぱっちんだのが投げつけられ、大作は悲鳴を上げた。
「やめろいおめえら。あいつが来るぞ。こんなスタジオ簡単に踏み潰されるぞ」
戴宗に怒鳴られ、皆ぴたっと止まる。
「ま、今の問題は、ちっと極端だったかなーと、俺様としても思わなくも、ねぇけど」
当たり前だ、と揃って怒鳴られて、戴宗は照れくさそうな顔で鼻の頭を掻いた。
「まあ、いいじゃねえですか兄貴。答えを教えたとか、不正があった訳じゃねえんですから」
「ほとんど教えてたけどね。まあいいよ、あんた」
まあいいまあいいの中、大作は笑顔で帰ってきた。なんと言っても全問正解、更にWアップだ。誇らしげに、詰まれた札束を示している。札束を見て皆の気持ちも札束のように統一された。
「中条さん、次は誰にしますか」
「うん」
三秒考えてから、
「銀鈴君だ」
「私ですか」
正直びっくりしたが言わば上司の命令だし、仕方なく椅子に向かう。ちらと客席を見ると、ディック牧と村雨がこっちを見て、顔を見合わせなにか喋り、またこっちを見ている。
何を話してるのかしら。
銀鈴は気になったが、椅子がうぅーんと上がっていって、きゃっと言ってスカートの裾をひっぱった。超が三つくらいつくミニのため、椅子に座って上に上がると、下からなかなかの眺めになる。
「お二人目は銀鈴さんです。おお〜、いいですね。美しいおみあしを拝見出来て、寿命がのびるようです。ところで得意技はなんですか」
ワッペンに聞かれて、必死で裾をのばしながら、
「しゃ、射撃と、テレポートを少しだけ」
「ほう。君のハートにテレポート!ですね」
びしっと指で指され、何と答えていいのかわからないでいる銀鈴に、司会二人が、
「それでは参ります。銀鈴さんへの、問題です。クイズ・ターイムチョップ!」
わんー。照明チェンジ。チッチッチッチ。
さっきまでの騒ぎが無かったかのように冷静な草間博士の出題が始まった。
『樊端は何枚銅貨を持っている?』
「ええ!?と、100枚?」
銀鈴が悲鳴を上げた。無情な沈黙の後5秒が過ぎ、
『ヒィッツカラルドはどこで髪を切っている?』
「何よその問題!え、駅裏!」
沈黙が続く。
『マスクザレッドの仮面の裏側はどうなってる?』
「くっ…チェック柄!花柄!わかるわけないでしょうー!」
沈黙。
十傑集の方は大喜びだ。手を打ったり膝を打ったり指差して大笑いしている。
呉は再び、この人なら何でもお見通しなのだろうと思いつつ、中条を見た。今度は、呉が見ただけで軽くうなずいて、
「感動の後には落胆があって、解答権が向こうに移る、という段取りだろう。誰が出ても答えられない問題しか出まい」
「で、銀鈴を選ばれたのは何故です?」
「うん」
中条はきゃー、いやーと叫んでいる銀鈴をちろりと見た。背後の正解ランプは真っ暗だ。
『最後の問題です。村雨の初恋は何歳の時、相手は誰?』
ぶちっと音がした。
「知らないわよ!」
怒鳴って振り返って見た正解パネルには『5歳。隣りの家のブルネットのおねえさん』と書いてあった。
「ああああー、銀鈴さん!やっ…てしまいま、した!」
司会者がなんだか嬉しそうに聞こえる口調で叫ぶ。女の子と二人、指先をくるくる回しながら、
「それでは回っていただきましょう。トルネーーード・スピーン!」
銀鈴は大慌てでスカートの裾を引き伸ばしながら、
「覚えてなさい村雨健二!きゃーーーーーー」
絶叫し、前後左右にぐるんぐるん回転した。白い、美しい脚線が一同の前で幻想的にかつみっともなくぶんまわされ、スカートの下が上になり横になり、見えそうで見えないようで見えたような気がする。
「うーん、眩惑されるねこれは」
御本人が感心している。
「もっとがばっと見せろ!出し惜しみするな!」
ヒィッツカラルドが下品に興奮している。
大喜びしている面々、執拗なカメラマンの動き、いつもより余計に回っている椅子を見てから、中条が先ほどの呉の問いに答えた。
「サービスショットがあれば、台無し感も薄れるかと思ったのだ」
「長官!番組制作側みたいなことを考えないで下さい」
思わず本気で怒った呉に、すまないと呟いたが、済まなそうでもなさそうだ。あああ、という顔で呉が振り返ると、ようやく銀鈴の回転が止まっていた。
もうヨレヨレになってフラフラ戻ってくる。苛酷な訓練に耐えているのだからこのくらいどうということもない筈だが、やはり精神的ショックが大きかったらしい。大丈夫かいと楊志に聞かれ、大丈夫ですと応じてから、再び観客席の村雨を涙目でにらみつけた。
「睨んでるぞ。覚えてろとか恨み言も言ってたな」
ディック牧が片頬で笑いながら村雨を見る。見られた方は肩をすくめて、
「俺は物覚えが悪いからな、すぐ忘れる。初恋の相手も忘れてたくらいだ」
スカートの中について熱い議論が繰り広げられる中、司会者が叫ぶ。
「解答権が十傑集に移りました」
「さあ、いよいよ我々の頭脳の見せ所だ」
樊端が張り切って手を擦り合わせた。
確かに、十傑集はBF団の精鋭というか、いや何かから選りすぐったというのとも違う、特権階級の連中なのであろうなということが、それ以後思ったよりもちゃんと証明されていった。
『太平洋と大西洋を結ぶ閘門式の運河は?』
「ん…パナマ運河だね」
『過酸化ナトリウムの化学式は』
「Na2O2・8H2Oだよ」
ダラーも突破。
『モーリシャスを統治していたのはオランダ、フランスともう一つは何』
「英国」
『ダダイズムのダダとは、本来どういう意味』
「馬」
タヌキ顔も突破。
『バヌアツ共和国の旧名は?』
「…ニューヘブリデス」
『UPI通信は何の略』
「…United Press International」
ぼそぼそ喋る顔色の悪い男も突破。
あっという間に賞金はふくれあがり、待望の1000万まであと一歩というところまで来た。次の解答者が最低ラインの6問を突破しさえすれば獲得だ。
「さあ大詰めです!樊端さん、この大事な局面を任せるのは一体誰!」
「うむ」
重々しく言って、ぬっと立ち上がると、のっしのっしと椅子に向かって歩き始めた。
「おおーっ、リーダー自らの手で賞金を勝ち取りに来ました!」
すっかりヒマになってしまった国際警察機構の面々は、へえーと言いながら眺め、うたた寝したり、大塚署長のところへ行ってお菓子を貰って食ったりしている。呉もあくびが出て目頭の涙を抑えてから、ふと中条を見て、
…笑っている?
改めて見ると無表情に戻っている。目の錯覚か、それとも今回も?
無言で疑問を発している相手に、低い声が、
「多分樊端は恥をかくことになる」
呪いの予言をされて、何故ですと言いかけ、
「…それも、テレビ的思惑の故ですか」
「そうだ。あと一歩のところまでひっぱって、奈落の底に突き落とす。テレビ番組の常套手段だ」
振り返ると樊端が椅子に座って上がっていくところだ。呉は自分が座っているように緊張してきた。
「今日一番の大詰めの場面で、十傑集リーダー直々のお出ましです。樊端さん、自信の程は」
「無論、有るに決まっている」
「心強いお言葉です。世界征服もそう遠い日ではなさそうですね」
意味がわかって言っているのかどうか、ワッペンがにこにこ笑っている。
「それでは参ります。樊端さんへの、問題です。クイズ・ターイムチョップ!」
わんー。照明チェンジ。チッチッチッチ。
さあなんでもこい、と肩をいからせた樊端に、草間博士の声が、
『BF団が結成されたのはいつ?』
なんだ、楽勝だぞと十傑集の中から声がした。草間大作用問題のパターンだな。勝たせてやろうということらしい。有難く賞金を貰って帰るとするか樊端。わははは。
それを聞いて中条がおやと呟いた。
「今回はすんなり十傑集に金を渡して終わりにするつもりなのか」
しかし、樊端は『え』という口の形のまま、かたまっている。楽勝だぞと言った面々がおいおいとうろたえ始めた。
「まさかわからんのじゃないだろうな」
「いやっわかる、わかるに決まっておる。ちょ、ちょっと緊張してド忘れ」
喋っているうちに5秒経った。
『BF団とは何の略?』
「ブルー…違った、バックファイア、違うビッグファ」
『十傑集は現在何人?』
「………」
目をひんむいてこっちを見ている連中(ダラーが自分を指差して、ノーノーと手を振り、ヒィッツカラルドとアルベルトが顔を見合わせ首を傾げている)を、こっちも目をひんむいて数えている。5秒経った。
「あーあ、完全にドつぼにはまったな」
「ありゃダメですぜ兄貴。何も耳に入ってねぇや。あーあーまた間違った」
二人はお菓子を食いながらもはや床に座って見物している。
「次に連中と戦う時には、リーダーの首がすげかわってるかも知れねえな」
「ありえるねえ」
一清は恥ずかしそうに、しかしきっぱりと無言で頷いた。
まるであくむのようだ。
頭の中では落ち着け樊端、落ち着けと言葉だけが空しくこだましている。草間博士の声まで時々聞こえなくなる。
何故だ。どうしてだ。リ、リーダーのこのワシが。この私が。
『最後の問題です。ビッグファイア様とサニーさん、可愛いのはどっち?』
「サニー…」
思わず答えてからはっと後ろを見る。正解欄には、『もちろん、ビッグファイア様♥』と書いてあった。
「おぉ〜〜〜っと…はん。ずい。さん!950、まん、えんがパァァァァァァだ〜〜〜〜!」
テレビ的にはオッケー!よくやった!という嬉しそうな声と、もはや顔色の無い樊端の顔がラップする。
「もうあんな奴知らん。勝手に回ってろ」
「白けたな。もういい。帰る」
「我疲労。空腹」
無情な同僚たちの声にかぶって、
「それでは回っていただきましょう。トルネーーード」
「ま、待っ…」
「スピーーーン!」
ぎゃーと絶叫があがり、ふさふさのヒゲと量の多い髪とマントが宙に舞い踊る。ほとんど鏡獅子のようだ。
「…番組側としては樊端に勝たせようとしたのに自爆したのか、そういう性格まで見越して敢えてああいった出題にしたのか…」
疑問をぶつぶつ口にしている中条に、
「あとで草間博士に聞いてみたらいいのでは」
呉がくたびれはてた声で言った。
それまで黙って見ていたビッグファイアさまだったが、この時こめかみに怒りの四つ角をこさえて、チャンネルを変えてしまった。
クイズシリーズ。毎度毎度、樊端ごめん。
大作の好きな食い物勝手に決めちゃった。村雨も。まあその辺は適当です。
昔からクイズ番組好きで、観てました(今も)。他にもやりたいのがあるんで、それはまた今度。うくく(笑)
実際の番組とは微妙に違うとこもあるけど、ご了承ください。
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