鳥と少年


 いつもの道を通って、承太郎は帰路についた。
 歩道を、途中から公園に入る。猫の額のような「ここをどうやって公園として利用しろというんだ」と聞きたくなるようなものではなく、ちゃんと噴水もありベンチもあり、年季の入った高木もあり、外灯も必要なくらいの広さのものだ。
 この中を突っ切って、入ったのと別の出口から出る。その先にある、これまた大きな神社の石段を上がると、家まですぐだ。
 それほどにしっかりした規模の公園だというのに、いつも、何故かあまりひとけが感じられない。むしろ、広すぎるからか。女子中学生や女子高生であれば、通らないようにしようとさえ思うかも知れない。
 しかし承太郎はそのどちらでもなかったし、たとえ真夜中に一人で通ったところで、『何が、どう』ということもないので、その静かな空間をいつも通過していた。
 だが今日は、妙に騒がしい。男だが、甲高い、回転数が速い。子供の声だ。それが、もう少し先の方から、
 「なんだよう!やめろよ!」
 「うるさい、お前が負けたんだろ。ちゃんと持てよカバン!」
 「重いよう!」
 「なんだよ。持てって。あ、こいつ泣きそうだ」
 あきれた声が、
 「また泣くのかよ。ホントに泣き虫だな信哉は」
 「泣き虫の信哉だから、なきむしンヤだ」
 わっと笑い声があがった。
 「あはははは。なきむしんやだって」
 「なきむしーんや、なきむしーんや」
 はやしたてる笑い声がいくつか、うわーんと泣き出した声が一つ。
 承太郎が足を進めるうち、木の向こう側に数人の子供の姿が見えてきた。予想した通りの面々だ。
 小学生低学年だろう。成長の度合いによって体つきはまちまちだが、顔の幼さでそのくらいだろうと思われる。全部で四人。
 承太郎は前にもこの連中を見たことがあった。今もやっぱりそうだが、じゃんけんで勝負をして、負けた一人が他の連中の荷物を持って、いくらかの距離を歩く。そこでまたじゃんけんをし、を繰り返しているのだった。
 あの時もやはり、やーいやーいと言われて泣いている子供がいた。今もそこで、ランドセルを三個、スポーツバッグを一個かかえて、めそめそ泣いている。
 承太郎は、庇ってやる気などはかけらもなかった。
 数を頼んで一人を全員で殴打、というのならいざ知らず、周りで笑ってはやしているだけだ。全員で同じ手を出して、その子供だけ負けるようにじゃんけんしている、というのでもなく、それどころか。
 「おまえさあ、あとだししてるくせに負けるんだよな。よっぽどたりねーのな」
 一人が言ったように、泣き虫は、じゃんけんの時にあとだしをしていた。
 「あとだしなんかしてない」
 小さな声で言い張っているが、この前とその前、承太郎も現場を見た。
 卑怯な手を使って、それなのに負けて、荷物を持たされ、泣いている子供を庇ってやろうという気には、全くならない。
 荷物をかつぎあげようとして失敗しぼとぼと足の上に落とし、本格的に泣き出した子供の脇を通り過ぎ、承太郎は彼らが向かうのであろう出口とは別の出口へ、向かった。

 別のある日、やはり公園の中を突っ切ってきた承太郎は、いつものその場所に、子供が一人、ぽつねんと立ち尽くしているのに気づいた。
 あの卑怯な泣き虫だ、とすぐにわかり、どうしたんだと思った時、子供は承太郎に気づいて、怯えた顔を向けた。
 色の白い、やや小柄な子供だった。前歯が虫歯になっているのが見える。ちんまりした鼻と口、取り立てて高価そうな服を着ているわけではないが、おふるではなさそうだ。甘やかされて育てられた末っ子、というところだろうか。
 承太郎のデカさや無用の迫力にびびっているだけか、と思いきや、あの…あの…と小さい声で訴えながら、もじもじしている。
 承太郎はいらいらして、無視して行き過ぎようかと思ったが、一応、親切に、
 「なんだ」
 親切には聞こえない口調で尋ねた。
 子供は案の定びびりあがって、豆みたいな顔色になってブルブル震えている。もう知らん、という訳で承太郎が行き過ぎようとすると、
 「あの、これ、…」
 ほとんど泣き出しそうな声が追いかけてきた。
 どうしたものか、と思案しながらも、これで最後だと思いつつ振り返る。子供は、両手を掲げるようにして、承太郎に突き出していた。
 「?」と覗き込むと、そこには、小鳥がぐったりとなっていた。茶色い、ありふれた野鳥のようだ。ヒナというほど子鳥ではないが、成鳥でもない。もうすぐ巣立つあたりだろうか。
 死んでるのか、と思いつつ指先で触れてみると、温かいし、反応があった。
 「そこの、木の下に、落ちてて…」
 子供がか細い声で言った。
 「飛ぶ練習でもしていて、アクシデントに遭ったか」
 「あの、ケガ、してる、のか、みて、欲し…」
 ごにょごにょと語尾が消える。はっきり言え、と承太郎がうなると、飛び上がって、トリ、見て!と叫んで更に突き出した。
 年上の人間への敬語がどう、といういちゃもんはつけずに、承太郎は鳥を掬いあげると、具合をみてみた。どうやら羽の付け根に怪我をしているらしい。血が出ている。
 「し、し、死ぬのか…どうか…」
 相変わらずもごもごした、そしてなんだか不用意に聞こえる言葉に、承太郎は眉をしかめて、
 「死ぬかどうかだと?死ぬんだったらもう要らないからとでも言うのか」
 ちっ、ちっ、ちが、と痙攣したような声を出して、首を振り、
 「た、た、助かるのか、どうかって…」
 結果としては同じことを聞いているようなのだが、相手の心構えが微妙に違い、「助かって欲しいのだが」という方向に向かっているのだということは、感じ取って、
 「まあ、死ぬようなケガじゃねえな。手当てして、面倒をみてやれば、そのうち治るだろうぜ」
 明らかに、子供の顔にほっとした表情が浮かんだ。そこに、
 「じゃあ返す。ほら」
 無情な声とともに、鳥を差し出してよこされた。子供はショックを受けた様子で、でかい高校生をまじまじと見上げた。
 普通、子供が、こういう事情で困っていたら、大人は、ああよしわかったと言って、手助けしてくれるものなのに。
 このひと、どっかおかしいんじゃないか。
 そういう顔つきの相手に、
 「この鳥を拾ったのはお前だろう。そのお前に鳥の具合を聞かれたから俺は手当てして面倒を見りゃ助かるだろうと言ったんだ。その後どうするかはお前が決めることだ」
 特に荒々しい言い方ではないが、この子供にとってはとてつもなく苛酷に聞こえることを、言った。
 子供は見る間に泣きそうになっていく。目に涙がたまってきた。口がへの字だ。しかし承太郎の顔には何の反応も無い。
 ほとんど泣き出している声で、
 「ぼぐ…どうじでいいが…わがらない…」
 「わからないことねえだろう。何もしないでもとあった場所に戻すか」
 「ぞ、ぞんな」
 目に涙と恐怖をたたえて首を振る。
 「じゃあ親に言って手当てしてもらえばいいだろう」
 「マ、マ、ママ、ドリぎらい…ぼぐが、いぐら、がっでっでだのんでも、ぜっだいイヤだっで」
 もうほとんど泣いている。ハナが垂れてきた。言葉が不明瞭でよくわからない。
 「そこを拝み倒すかどうかだろうが。諦めるんならもとにあった場所に戻すだけだ」
 「それはいやだ」
 子供は泣き出した。もとから泣いていたが、自分の泣き声にあおられていよいよ泣き声が高くなる。
 震える手で必死に顔をなすっている。えっえっえっえっとしゃくりあげ、うううう〜と泣く。長い睫毛が涙でくっついて束になっている。
 「いやだ、いやだよう」
 訴えながら地団駄を踏む。そして、更に泣く。しょうがないな、俺が病院に連れてってやる、と言ってくれるのを懸命に願いつつ泣きながらチラと上目遣いに承太郎を見上げたが、どんなに泣いても訴えても、そのことが目の前の大男には何の効力も無いようだ。数秒間、彼の泣き声が流れた後、びーびー泣いてねえでいい加減、どうするのか決めろ、と言われたからだ。
 「だ、だって、」
 黙って泣いていてもどうやら、相手がコマを進めてはくれないらしいことに、遅ればせながらようやく納得して、子供はなんとか口を開いた。
 「ほっといたら、トリ、死ぬんでしょ」
 「ほっときゃ死ぬだろうな。飛べないからエサも取れないし、敵からは襲われるし」
 「て、敵?」
 「ネコでもイヌでもなんだっているだろう。飛べない鳥なんざ、トリ肉、と同じ意味だ」
 子供の顔が気絶しそうになった。
 「そんなのイヤだ」
 相変わらず同じところでぐるぐる回っているようだが、相手の言葉に込められた力に、何らかの変化を感じ、承太郎はちょっと相手の顔を注視した。
 「あっ。あの」
 子供はぶるぶる震え、やはりまだ涙を流しながら、承太郎を必死で見上げ、
 「この鳥のケガの、手当て、して…」
 例によって語尾が曖昧になりかけたが、一回喉を鳴らし、
 「手当て、してください。ぼ、ぼ、ぼくが」
 震える声で、
 「面倒をみるから」
 …この子供にとって、相当な高さのハードルを跳び越えたのだろうということは、承太郎にもわかった。
 相当どころか、生まれてこのかた越えたことのない高さかも知れない。普通の子供なら、当然のように越えている高さかも知れないが、この甘ったれの泣き虫には、なかなか苛酷な障害物競走だったようだ。
 果たしてゴールまでいけるものやら、心許ない様子だが、何はともあれ一歩目のスタートを切ったらしい子供に、そうかと呟いて、鳥の具合を診ながら、
 「お前の親は鳥嫌いなんだろう。どうやって面倒をみるんだ」
 「かっ。隠して、こっそり」
 背水の陣、という顔をしている。
 「ふん。覚悟だけは本当にしたらしいな」
 さして気の無い様子で、「えらいぞ」でも「よく決心したな」でもない大男が、やがてもう一度子供を見て、
 「学校に戻る」
 「えっ」
 「保健室で消毒薬を借りる。お前も来い」
 「えっ。なんで」
 「こいつの責任者はお前だろうが」
 なんだかまだ自覚の無い相手に、承太郎は呆れたような、怒ったような、表情になった。

 それから、手当てを終えた鳥を抱えて、子供はびくびくびくびくした様子で帰っていった。あんな様子じゃすぐにバレるんじゃないのかと思ったが、どうやらばれずにすんだらしい。翌日、同じ場所に立っていて、大丈夫だったと言った。
 「まだばれてない」
 「まだってのはなんだ」
 承太郎は思わず苦笑した。
 「まあ、せいぜい、お前の母親の魔の手から、あいつを守ってやることだな」
 子供はちょっとうらめしげに承太郎を見た。母親を悪の総裁みたいに言われて不本意なのだろう。
 「どこに隠してるんだ」
 「つ。机の引き出し。一番下の大きいやつの奥」
 「ちゃんと日光にあてろよ」
 あっそうか、という顔になる。
 「学校から帰ったら、連れて、出かける…」
 「きれいな水を飲ませろよ」
 それは大丈夫だという顔になる。しかしなんとも、あぶなっかしい。
 「お前みたいなガキに拾われて、あの鳥も難儀なことだな」
 そんなこというんだったら、代わりに面倒みてくれればいいのに、という顔になってから、
 「ピッチーはそんなこと思ってない」
 「なんだそのピッチーてのは」
 「名前」
 なんとも陳腐でヌルく、いかにもな名前に、承太郎は内心「だー」と思ったが、人のネーミングのセンスをとやかく言えるほどのセンスでもないと思ったのか、その点についてはコメントしなかった。
 「なんでもいいからさっさと帰って、鳥を日に当ててやれ」
 「ピッチーなのに」
 「さっさと行け」
 子供は泣きそうな顔で駆け去っていった。家が近くなのだろう、すぐに戻って来て、
 「ほら」
 ポケットに入れた鳥を承太郎に見せた。鳥は黒い目で承太郎をじっと見ている。
 どうやらすぐ急変ということはなさそうだが、小さい動物は突然何があってどうなるかわからないからな、と内心思いながら、傷の様子を見て、
 「うん」
 とだけ言った。

 それから数日して、あの公園を通ると、子供が泣きそうな顔で待っていて、承太郎を見ると駆け寄ってきた。
 「あの…ピッチーが、ごはん食べないんだけど…」
 「何を食わせたんだ」
 「僕のおやつのクッキーとおせんべい」
 承太郎は目を丸くして、
 「鳥がそんなもん食うか」
 子供はえっと声を上げた。本当に知らなかったらしい。
 「じゃあ、何食べるの」
 「生きた虫だな」
 「イキタムシってなに」
 承太郎の顔に『やれやれだぜ』が浮かんできた。
 「生きて、元気よく、動いている、虫だ」
 「ああ、虫か。…えええっ」
 子供がたまぎる悲鳴を上げた。
 「そ、そ、それって…」
 迷ってから、
 「ど、どこで売ってるの?あんまり、おこづかい持ってないんだけど」
 数秒間かたまってから、ああ…近頃の、ガキは、と偏屈ジジイになりそうな気分で、
 「生きた虫なら、いくらでも、タダで手に入るだろう。その辺の草や石をひっくり返せば」
 「もしかして、それ、つかまえるのは…」
 下からすくい上げるように自分を見ている子供に、承太郎はとうとう怒鳴りつけた。
 「お前だ」

 それからがまた一苦労だった。絶対イヤ、さわれない、ムシ怖い、と泣き喚く子供は、前回よりさらに高そうなハードルを越えて、甲虫の幼虫らしきものをわりばしでつまみ、そのわりばし越しの感触に震え上がりながら、ビニールの袋に入れた。
 小さい声でなにかお経のようにとなえているので、何だろうと思って聞いてみると、
 「ピッチーのため、ピッチーのため」
 なんともひ弱なガキだと改めて呆れつつも、なんとなく承太郎はつきあって、いろいろな虫の採り方を教えてやった。しかし、実際に採ることに関しては、一切手を貸さなかった。

 新鮮な虫でなければいけないというので、子供はそれから毎日、補虫セットを持って公園にやってきた。最初の頃は承太郎が来るのをもじもじ待っていたが、やがて、承太郎が行くと既にチャレンジしているようになっていた。
 ある日行くと、他の子供たちが、あの子の周りにいて、
 「この頃信哉すぐ帰るじゃん」
 「こんなとこでなにしてんのかと思ったらよ。お前虫捕りなんかできるんだ。へーちょっと意外」
 「だよなー。なきむしンヤは虫なんかつかめないと思ったよな」
 子供はちょっとうらめしげな顔を上げたが、別にけなされたわけではなくむしろ誉められたので、また元の位置に戻った。
 「でもなんでだよ。標本でもつくんのかよ」
 「違うよ」
 「じゃあなんでだよ。教えろよ」
 「え…」
 小声でイヤそうに言って戸惑ったが、やがてしぶしぶと、「ケガをした鳥を助けて、今世話しているのだ」と打ち明けた。
 子供たちはすげー!と大騒ぎし、ひとしきり騒いでから、
 「俺たちも採ってやっから虫。その代わり見せろよ鳥を」
 「え…」
 子供はまた小声でイヤそうに言ったが、聞くものではない。一斉にはりきって虫捕りを開始した。
 「あ、あの、そんなにいらない…」
 「あっそうか?じゃあ見せろよ鳥!」
 「見せろよ!」  みーせーろ!みーせーろ!と騒がれ、子供はまたもやしぶしぶと家に戻って、鳥をポケットにいれ戻ってきた。
 「うひょーかわいいー!ちっちぇー!」
 「思ってたのよりちっちぇーのな。な。かわいいな。あったけー」
 「撫でさせろ」
 子供たちの乱暴な手でぎゅっと握られ、鳥がピーと声を上げた。と、
 ばしん!
 音がして、皆目をぱちくりさせた。
 鳥を握った子供の頭を、あの子が叩いていたのだった。
 それでもなおおびえたような顔で、
 「ケガしてるんだから、ぎゅってしちゃだめだろ!」
 叫んで、鳥を取り返すと、自分のポケットに入れた。
 子供たちはきょとーんとして、お互いの顔を見合っていたが、やがて、
 「へえー」
 わけのわからない感心の仕方をしてから、
 「そっと触るからもう一度見せろよ」
 「な」
 「うん」
 その一連を、承太郎は、隠居のじじいのようにただ眺めていた。

 鳥はすっかり元気になり、チチチと鳴き声を上げるようになってきた。
 「これじゃあお前の母親にばれるんじゃないのか」
 「うん…」
 暗い顔になっている。
 そのとがった口元を見下ろしながら、承太郎はちょっと考えて、
 「だが、どの道、そろそろ放してやる時期だな」
 子供はびくんとして承太郎を見上げた。
 「もうすっかり良くなったようだ。そのことはお前が一番よくわかるだろう」
 「わかるけど、うん、でも…」
 「お前も俺も鳥ではないが」
 承太郎の目が鳥を見て、
 「何が鳥にとって一番いい状態かってのは、想像できるはずだ」
 子供はやはり鳥を見た。鳥は今は子供を見上げている。小首を傾げている。
 それからまた、随分あってから、わかったと子供は言った。

 その翌日、子供は承太郎を待っていた。
 歩いていき、相手の顔を見た時に、あとだしした上ジャンケンに負けて、荷物がもてなくて泣いていた子供とは、別人のようだと、承太郎は思った。
 しかしやはりそのことは言わず、黙って立ち止まり、相手を見下ろした。
 子供は暫くただ、承太郎を見ていたが、やがて、
 「じゃあ放す」
 低くかすれた声で言って、ポケットに手をいれ、小鳥を取り出した。
 鳥は大人しく子供の顔を見ている。
 子供は鳥を見つめた。涙が溢れてきそうなのを懸命にこらえて、
 「元気でね、ピッチー」
 そう言って、眉をしかめると、思い切り鳥を空中に投げた。
 鳥は戸惑ったようにバタバタとせわしく羽を動かし、そして、その時、自分は翼でもって空を飛ぶ生き物だったことを思い出したように、大きく羽ばたいて、空に舞い上がった。
 「ピッ…」
 なおも呼ぼうとして、子供は喉でそれを止めると、歯を食い縛って、涙を流した。
 今まで無数に流してきた甘い涙とは、確かに違うその涙を見、そして一心に飛び去って行く鳥の姿を目で追って、
    お前達はいい。
 承太郎は遠く、とてつもなく重く、はるかな気持ちを胸に抱いて呟いた。
    別れが、
    本当にそれぞれのためであると言えるからだ。
 それから、首を振った。
 自分には、あの別れを意味のあるものとする義務がある。
 それから、また首を振って、
 こういうエヌエッチケイ的道徳の教科書的な言い方は、俺の柄じゃねえなと思った。

 それから、承太郎は公園を歩いても、あの子供に会わなくなった。
 別の場所で遊ぶようになったのかも知れないし、何かクラブにでも入って時間がずれたのかも知れない。
 だがもう多分、あとだしジャンケンで負けるようなことは、していないだろうとふと思った。

[UP:2004/12/30]


 久方ぶりの承太郎でした。
 この話は、ハイタニケンジロウという人のお話を読んだ時に思いつきました。似てるなと思ったらその通りです。まあ、たびたび見かけるパターンの話ではありますが。
 ジョジョとは成長の物語ですからね。今の自分を抜け出して、強くなってゆく物語。と、思います。


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