あれは夢だったんだろうか?
夢の中でもそう思っていたっけ。これは夢だとか。
首をかしげながら、花京院は朝の道を歩いている。
夢にありがちな、不条理な部分が全然なくて、総天然色で、サラウンドで、そうだ、妙にバーチャルな夢だった。今朝起きたら制服が焦げ臭かった。
…どう考えても、やっぱりちょっとおかしい。母親の態度もおかしかったし。「言いたいことがあるけど、言うなって言われてるのよ」といわんばかりの…
思わず足を止めた後ろから、
「何言ってるんだ?一人でぶつぶつと」
いつのまにやら側まで来ていた男を、花京院は見上げた。両手に包帯を巻き、頬にはでかいばんそうこう、ただでさえ年季の入っていた学ランはあちこちに新たな裂け目をつくっている。
そしてなにより、全体からたちのぼる、しめっぽく焦げ臭いにおい。
「ど…どうしたんだ、一体」
仰天して叫ぶ花京院を見下ろして、
「何でもない。それより、今日授業フケるんだろ」
「え?あ、ええ。…あのう」
首をかしげて、おそるおそる尋ねる。
「僕がつれていくのがどこか、きみは知らないんでしたっけ?」
「当たり前だ。知る訳がないだろう」
「でも、ここに連れてきたかったのかって、きみが尋ねて、それから」
「知らねえな。夢でもみたんじゃないのか」
しらっと答える。
「夢。やっぱり夢なのか?でも」
頬をさすりながら、まだ反対側に首をかしげている花京院に、
「俺が出る夢だったのか?他に何を言っていた、俺は」
「あ、いや。その。」
急にうろたえた相手に、意地悪く笑う。
天を埋める、薄紅の慕情。
限りなく心を千切って降らせ続ける思い。
昨夜、犬しか見る者のいない激闘を演じた相方が、今そこで泣くように、血を流すように自分の思いを宙にまきちらしている。
黙っているのを、呆然と見とれているのだと思った花京院はふんと胸を張って、誇らしげに、
「どうです?綺麗でしょう?この世で」
「一番といえるくらい、綺麗だな」
昨夜の相手の言葉をなぞって、承太郎は桜の流す涙を眺めた。
「でしょう。僕が昨日、下見に来た時は満開だったのだけれど。だいぶ散ってしまったな。仕方ないか」
それから、うーんとうなって、
「やっぱりあの姿をきみに見せたかったな。見に来るのを待っていてくれたような咲き方だったんですよ」
「待っていたんだろうぜ。お前をな」
重たく呟いて、胸の中で続ける。
だが、やっぱりお前が桜の親戚にされるのを、黙ってながめている訳にはいかないからな。
桜より、何とかの色の方が好きだとか、寝言もほざいていたし。
ほんの、少しだけ、口の端で微笑すると、鼻の先に乗った花びらを指先ではずした。
[UP:2002/2/27]
甘い!甘だるい!んん〜メルヘン…ごめんなさい!!
花京院のお母さんが承太郎の家に電話をかけてくるというのが最後までひっかかっていました。もう夜遅いからって高校生の息子を必死で探すのか?過保護!というのは置いておいて、
生き残ったら日本に戻って来てちゃんと転校して(笑)クラスメートになって「僕の友達の空条くん」の電話番号を母に…言うのかなあ。何か不自然のような気も。で承太郎から花京院さんちに電話をかけてもらったけど、これまたヘンなんですな。「空条承太郎だが、典明はいるか」ですかい(笑)あなたスパイじゃないんだから。合言葉かって。
結局未消化のままでした。
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