なんとなくきまり悪くて、そっとドアを開けると、大作はこちらに背を向けて、ソファに座っていた。
幻夜が帰ってきたことに気づかないらしい。しょんぼりと落とした肩、ひとまわり小さくなったような背中、さっき押し倒された時にもみくちゃになったままの頭。左右の髪が、あさっての方を指してつったっている。
わきっちょの方が、乱れている、と言うのかな。
幻夜はほほえんだ。優しくて、甘い笑顔、と言ってしまうと、大作を篭絡しようとしていた間はずっとそれだったし、今までの美少年たち誑しこみ大作戦の時もずっとそればっかりだったのだが、今の幻夜の顔は、どこか違っていた。
ただし、自分では決してわかっていなかったが。
後ろ手にそっとドアをしめ、ゆっくり近づく。うつむいた大作の姿が、泣いているように見えて、少し慌てる。
ごめんありゃウソだから。別に実際は何もしてないんだから泣く必要はないだろう。すぐ泣く子はキライだな。いや、キライじゃないけど。
なんだか言い訳にもならないことをもぐもぐ口の中でシミュレートしながら、指をどういう風に肩に置こうかと、空気の肩をもんでいると、
途端、大作がくるりと振り返って、
「ばぁ!」
叫んだ。仰天して後ろに下がる。大作はけたけた笑って、
「びっくりしました?ね、びっくりしましたか?」
一瞬のち、思い切り胸を張って怒鳴っていた。
「びっくりなんかしていない!」
怒鳴ってから。怒鳴られてから。お互いに、なんか、やってることが、同年代だという気がした。

それから。
大作は、ずるずると、幻夜の側にいた。
幻夜が、結局はっきりした言葉を告げずに、側にいることを許しているからだ。
はっきりした言葉とは?と尋ねられたら、
『わたしのそばにいてもいい。ただし君もBF団の一員になりたまえ。我々の計画の為に、GR1を使うから、そのつもりで』
サンプルとしてはこのようなものだろう。
けれど、幻夜はその言葉を言いたくなかった。で、言わなかった。言わないままにしてある。
当然、同僚からは突き上げをくらうこととなった。
「GR1はいつ来るんだ。GR1が来ないのなら草間大作など(ここで思い切り侮蔑的に)ただの、小ざかしい、小うるさい、小生意気なガキに過ぎないのだぞ」
幻夜はこめかみに脈みゃくと怒りを盛り上がらせながら、
「大作くんが苦しむだろう。あまりに可哀想じゃないか。父の仇討ちの気持ちで今までBF団と戦ってきたのに、その手先になれなどと言われたら、どれほど辛いか」
あまりにあきれかえったため、同僚の顔はアホみたいに見えた。
大分、経ってから、どこか痛いみたいな口調で、
「そこまで病気が進んでいたのか…今日この時、貴様の、寝言だかなんだかを拝聴するために、今までずっと貴様のやってることを黙認してきたのかと思うと、情けなくて叫び出したくなる」
「イヤミだか皮肉だかは結構だ。叫びたいんなら海にでも行きたまえ。とにかく、わたしはそんなことは言いたくない。まるで、君はGR1のコントローラーだから連れてきたんだと言ってるように聞こえるじゃないか」
「さいしょっから、そうだろうがぁぁぁ!!」
同僚は喉を限りに怒鳴った。ぶんなぐったテーブルが真っ二つになった。どすん!とMの字になったテーブルの向こうとこちらで、お互いの間に深すぎる河が流れていることを各々思った。
「貴様が言わないのならいい。私が言おう。やつは貴様の部屋だな?」
指をきゅ、きゅとすり合わせてから、ぐっと握り締める。
「イヤだなどと言ったら締め上げてうんと言わせてやる。かえってその方が話は簡単だ。最初からそうすればよかったのだ」
満足げにうなずいて部屋を出ようとしたその前に、幻夜が立ちはだかる。
青ざめた顔。懸命なまなざし、緊張のあまりうっすら汗をかいた白い額、必死の口調で、
「やめてください、アルベルトどの」
顔を、ぐりぐりと幻夜の鼻先に突き出して、思い切りいやったらしく、
「駄目だな」
言ってやる。相手の目が歪んだのを見て、胸がすっとした。で、図に乗る。
「で、なければ、草間大作を人質にして、国警にいろいろと要求をする。非力な正義の味方どもだ、何の抵抗もできずに言いなりになるしかあるまい。うん、これもいい」
にやにやと幻夜の顔を眺めて、
「それなら貴様も言いやすかろう。手下ではなく、あくまで人質だ。『お願いです!ボク殺されちゃいます!GR1とあと適当にみつくろってBF団に渡してください!』とか何とか言ってやれ、という命令ならば」
大作の声色をしてみせた同僚はかなりブキミだった。
相手がこっちを馬鹿にしている、とはっきり表しているのにそれに対して馬鹿にするなと怒鳴れないのは、かなり胃がむかつくことだったが、幻夜も自分の立場が弱いことはわかっている。一回きつく歯をくいしばってから、
「それも出来ない」
「何故だ。草間大作は貴様にメロメロなのだろう?貴様がやれと言えば、たとえ」
「大作くんは」
相手が何か下品な例えを言おうとしているのを察知して遮った。
「国警の連中に心配をかけているのを心苦しく思っているのだ。国警に戻るのが筋だとちゃんとわかっている。その上で…わたしの側にいたいと思ってくれているのだ」
最後で少し赤くなった相手を、同僚は吐きそうな顔で見ている。
「その大作くんに、国警の連中に後ろ足で砂をかけるようなことをさせるなど、とてもできない。とにかく、大作くんには手を出さないでくれ。いないものと思って欲しい。あの子はあくまで個人的にわたしが」
「幻夜」
同僚の声に、今までのうんざりした気分や馬鹿にして嘲笑う気分とは少し違う、殺気に近いような、本気の憤りの色が加わって、
「貴様は少しばかり勘違いしているな。BF団は貴様のオモチャの軍隊ではない」
驚くような速さで幻夜の顎をつかまえる。幻夜は反射的に顔をそむけようとしたが、指にこめられた力がそれを阻んだ。
「草間大作はGR1のコントローラーだ。ただそれだけの存在だ。BF団にとってはな。貴様の」
顔を近づけ、片目を細める。ぎゅうううと指に力が入って、顎が変な音を立てた。
低い、ドスの効いた声が、無理やり耳に入ってくる。
「コントローラーが可哀相だの可愛いだのというたわ言、聞きたくもない。二度と口にするな」
苦痛を堪え、幻夜は相手の腕を掴むと、全力で引き剥がした。叫ぶ。
「わたしは、たわ言とは思っていない!真剣だ!」
指が最後に剥がされる時、同僚が爪で傷つけた口の端から、幻夜は血を流していた。真っ白になった顔に、血だけがやたら赤い。まるで、彼の、思いの熱さが色になったように。
衝撃のアルベルトは相手を、つらと眺めてから、
「貴様がどれほど真剣だろうと、そんなことは、朝食のメニューの内容ほどにも、重要ではないぞ」
冷厳に吐き捨てた。

わたしだってわかっている。
髪を少し乱したままで、幻夜は自分の部屋へ向かう。
今が、決して、恒久的に続く状態ではないことくらい。
でも…心地よいのだ、手放したくないのだ、切なくて甘くて柔らかくて、つらいのに…それさえも甘い。
こんな気持ちになったのは初めてなのだ、と同僚が聞いたら再びぶちキレそうな事をそっとつぶやき、それから、
手下でも人質でも、どちらだろうと構わない。とにかく、はっきりと結果を出せ。でなければ貴様の目の前で、あのガキを殺す。
カケラの情も含まず言い切られた時のことを思い出して、白い顔がいよいよ白くなる。あの御仁は本気だった。本当に、崖の縁まであと少しのところまで来てしまっているのだ、わたしと…大作くんは。
では、どうすればいいのか?
思わず噛んだ唇は、少し前に傷つけた箇所から、再び血を流した。血はしょっぱくて苦かった。
ゆっくりと、自室のドアを開けると、大作は巨大なテーブルについて、熱心に何かを読んでいた。足がぶらんこ状態で、より幼く見える。
わたしが入ってきたのも気づかない程熱心に、何を読んでいるのだろう?と思う。そっとそっと近づいていって、後ろから本を覗き込み、
再び顔色が引く。と、大作が気づいて振り返り、
「…幻夜さん、」
おかえりなさいと言おうとして、相手の顔色の悪さや、口の端に残る血の跡、それから全体にやつれた雰囲気に、一旦口をつぐんでから、
「これ…」
ちょっとページの上をさする。一番上に、バシュタール、と書いてあった。
「僕、10年前にあったこと、何も知らないんです」
椅子から降りて、幻夜に向き直る。
「国警っていうか…その、表の世界にいた時、図書館や本屋に行くことはありましたけど、10年前にあったことについて説明してある本てなかったんです」
ここは裏の世界か、と幻夜は苦く笑った。
「でも、ここの図書室には、いろんな本があって」
そうだろうな。ここには発禁本すら揃っている。
大作はちょっと躊躇してから、思い切って顔を上げる。
「幻夜さんが言っていた、世界に疎まれて死んだお父さんて、…
フランケン・フォン・フォーグラー博士のことですね?」
はっきり自分が青ざめるのを感じた。貧血を起こしそうだ。その、辛く懐かしいその名を、この少年の声で呼ばれると、なんだか、泣けてきそうになる。
片手でくちもとを隠して、なぜ、と呟くと、大作は申し訳なさそうに、
「大怪球を見た時、あれはバシュタールの悪魔だって言ってる人がいました。どういう意味か聞いたけど教えて貰えなかったんですが…ここで、本を見ていたら、」
本の数ページ前を開いて見せた。
懐かしい父の写真。
世界の平和を、誰よりも願っていた、偉大な科学者、そしてそのすぐ側で、このひとが自分の父親であることを力いっぱい誇っている、少年の姿。
何も知らない。この後なにが起こるのか、何も知らないで。
眉をしかめる。目を閉じる。その顔を必死で見つめて、ごめんなさい、と一回謝ってから、
「幻夜さんですよね?このひと…ごめんなさい。でも」
自分も眉をしかめて、うなだれながら、きっぱりと、
「僕知りたいんです。10年前のバシュタールで何があったのか、本当のことを」
顔を上げ、幻夜の横顔をじっと見つめて、
「このこと知らないままでは、ちゃんと、幻夜さんのことが見えないままだと思うんです。幻夜さんの側に近づきたいんです。駄目ですか」
同僚にはどうしてもぶち切れてもらうしかなさそうだ、
わたしに近づきたくて、バシュタールの真実を知ろうとするなんて、
こんな子は初めてだ。
「草間…大作」
手を伸ばす。大作の頭に触れて、そっと撫でた。
さらさらと言う髪、指先にのこる体温、それから、
幻夜の、一番奥にまで入ってこようとするひたむきな情熱を、幻夜は確かに感じとり、
「…ありがとう」
気づいたら感謝していた。

「最初は良かった。5人は同じように、現状を憂い、義憤にかられ、未来のエネルギー問題をこのガラス管によって解決しようという熱意と、必ず出来るという確信とで結ばれていた。…そのことに間違いはなかったと思う」
静かに話す横顔は、暗く、けれどひどく思慮深く見えて、大作はこれから自分が受け取る事実の大きさを予感して緊張しながらも、
幻夜さんてやっぱりステキだ…
場にそぐわない、かすかに不謹慎な思いでその顔を見つめている。
「しかし、正当な情熱さえあれば物事はすらすらと進む、というものではなく、むしろその逆だった。次第に5人は焦り出した。それも、仕方のないことだと、言ってもいいと思う。…だが」
びくびくと、左目の下の頬が痙攣する。
必死で自分を宥めている男を、大作は握り拳をつくって見つめている。
僕は幻夜さんに、ひどい思いを強制している。思い出したくもないことを思い出させようとしている。でも、どうしても知りたいんだ、やっぱり、幻夜さんの口から。がんばって幻夜さん、応援してますから。それにしても幻夜さんて、苦しんでる顔もかっこいい。時々ずこーってコケる顔はハンサムな分落差がおっきくて笑っちゃうんだけど。
「…5人は、触媒である培養液をつくりだし、中に核となるものを入れ、それが反応を誘起して、莫大なエネルギーを供給するシステムを考えついた。しかし、… 君は、シズマの核が何であるか知ってるかね」
「えっ?」
不謹慎な流れに身を任せていた大作は突然質問されて、
「あの…液体の中に浸かってる、赤くて丸いアレですか?」
「そうだ」
「いいえ」
いいえと言ってからはたと気づく。
「え?あの、もしかして僕が知っているようなものなんですか?」
幻夜はかすかに笑った。
「多分ね。君の国が世界に誇る保存食ではなかったかな」
「え?」
「いや」
首を振って、
「5人はその核になるものを必死で探した。理論は合っている筈だ、それにかなう現物さえあればそれでいい、しかしどうしても見つからなかった。…次第に、なんでもいいから入れてみろという意見も出るようになった。しかし父は止めた、何しろ石油や原子力をしのぐエネルギーを生み出すべく研究しているものなのだ、下手なもので反応させて予期しない事態が引き起こされたら…それを止める手立てはないだろうと。…」
うっすらと額に汗をかいている。
今でも夢にみるのだ、あの部屋の中を。やたら天井が低く感じられる、粉をふいたような白く灰色の四角い部屋は妙に彎曲して、ドアの敷居は身をかがめないと出入りができない、中の空気は息苦しいほど熱く、酸素が少なくて、胸が圧迫される。壁に掛かっている時計は、なぜか13時まであって、針が四本もある。窓の外は虹色で、次に見ると真っ暗で、時間も季節もわからない。
その中で、父以外の4人が、何かの上に身を乗り出すようにして覗き込んでいる、そしていっせいにこちらを振り返る。
四対八個の目は全て赤色灯の色をしている。
覗き込んでいるのは誰かの棺で、蓋には…
『読んでみなさい。君のよく知っている名だ』
ここで絶叫して目覚める。夢なのだ。目覚めれば消える。けれど、あの夜がなかったことに出来る訳でもない。
息が苦しくなり、あえぐ。思わずえりもとを寛げてから、
「父の言うことは正論だ。それは皆わかっていた。しかしもはや正論で押し留められる焦燥ではなかったのだ。ある夜、それがついに臨界点を超えた」
大作が思わず身を縮めた。
その顔を見遣る。大作はびくっと震えて、見返した。
「君の読んだ本には、何とかいてあった?」
不思議なほど静かに、平静に、幻夜は尋ねる。大作はそのことに力づけられて、はい、と細い声で答えて、
「フォーグラー博士が…功を焦って、暴走したって」
うん、とうなずく声は力なく、そうなっている、と続けて、
「本当は違う。暴走したのは4人の博士の方で、父はそれを止めようとしたんだ。けれどもう遅かった。わたしたちが実験場にかけつけた時にはもう…もう、あたり一面緑色だった!!」
「えっ?」
きょとんとなる。幻夜は絶叫した。
「あんな…あんなものを入れるから!いくら栄養があるからって!バカじゃないのか?バカ!」
「あ、あのう」
両手で顔を隠し、暫く肩で息をしていたが、やがて我を取り戻すと、ばりばりハンカチで汗を拭いながら、
「失礼した。…とにかく、実験は大失敗で、4人の博士は逃げた。父が一人その場に残った。バシュタールは青汁に浸かって壊滅した」
「え?あおじ…」
思わず聞き返そうとした時、幻夜がでかい声で叫んだ。
「だが!その後、さらに恐ろしい事態が待っていたのだ」
「はい」
大作は恐ろしさに身震いする思いで、
「ちょっとだけ読みました。世界がエネルギー停止…」
「そうだ。世界中の水はバシュタールの汚染された水と繋がっている。無限に連鎖反応を起こし、」
「………」
「世界中の水道からは青汁しか出なくなってしまったのだ」
大作は黙った。
「世界中の人間が緑色になった七日間だった。今思い出しても緑色になりそうだ」
なんか…
大作の表情にあいまいなものが浮かんだ。
そりゃ、悲劇なのは悲劇だろうけど…なんだか…今ひとつ…
「シズマは全ての責任を父になすりつけた。父のせいにして再び研究を始めた。愚かな連中は皆こぞって父に憎しみをぶつけ、罵ったのだ!中には健康になるやつも沢山いたのに」
「でもそれはやっぱり」
誰だってイヤだろう。顔を洗うのも歯を磨くのも青汁では…呪いのひとつも言いたくなる。ってそういう問題でもないし。
「その中で、シズマたちは核となるものを見つけ出し、正式にシズマドライブとして発表し…現在に至っている。世界の人々は10年前にあったことから顔をそむけ、考えないことにし」
「そりゃ考えたくないですよ」
「現在の繁栄を謳歌しているのだ」
大作のつっこみを無視して幻夜はそう続け、ああと深く嘆息した。
手を、胸の辺りでぎゅっと握る。それは大作にはわからなかったが、父と、母ののこしたかたみの上の場所だった。
「さぞや無念だったろう…世界の平和をあんなに夢見て…昼も夜もなく研究に打ち込んでいたのに。…最後は緑色になって…父さん」
ぎゅっと口を結んでから、
「だが見ていろ。いずれ人々が完全にあの日のことを忘れ去った時…バシュタールの亡骸の上に砂上の楼閣を築き上げた時!その時わたしが大怪球とともに正義の鉄槌をくだしに現れるのだ!」
激しく、熱く宝塚のように叫ぶ。目はきらきら輝いている。頬は紅潮し、さながら10年前の彼がそのままここにいるようだ。
「正義の鉄槌って、シズマドライブを停止させるんですか?」
「それは序の口だ。だがいい線いってるぞ。人々からシズマドライブを奪い取り、手も足も出なくなったところへ!くくく、くくくくく」
笑い出した幻夜を見て、大作はなんとなく予想がついた。
「人々の頭上に、青汁の雨を降らしてやる!あぁっはははははは!あははははは!」
笑いながら、幻夜は泣いていた。
何となく、事態は微妙な雰囲気になってしまったけれど、幻夜にとって、大切な誇らしい父を、惨たらしい形で失ったということは確かなのだ。
「あはははは。ははは。は…く、くくく。く…くう」
最後は嗚咽になった。ひっく。ひっく。父さん。父さん。えっくえっく。
誰かが背中を叩いている。
涙に濡れた目で見ると、大作が、自分も目にいっぱい涙をためて、でもどこか微妙に笑いをこらえながら、幻夜の背や肩を叩いていた。
「僕は知ってますから。…幻夜さんのお父さんが」
ぽろりと涙がこぼれた。
「すばらしい科学者だったって、ちゃんと知ってますから。それに僕、青汁って大嫌いです」
その涙を見つめて、
幻夜の中にひとつの決意が生まれた。
わたしの父さんのために泣いてくれた子。
―――この世でたった一人、わたしの父さんのために。
その彼に、
父親を裏切らせるわけにはいかない。

その夜。
すやすやと寝入った大作の寝顔を、しばらく眺めてから、幻夜は手を伸ばし、腕時計の発信装置を入れた。

突然、暗黒しか映さなかったレーダーに緑の点が現れた時、疲労の極みでついうつらうつらしていた呉学人は、見間違いだと思い、その後いくら目をこすっても消えないことに改めて気づき、
「皆!起きろ!大作くんだ!」
絶叫した。床に転がって寝ていた連中がいっせいにばぁっと起き上がった姿は、ゾンビか、マペット人形のようだった。

[UP:2002/2/22]


勿論、ではございますが…上で言ってるシズマドライブはウソ八百ですので…
バシュタールもネ。ってわかりますよね(汗)
ああ、終わらなかった!!次、次こそ完結!!

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