その後アルコール抜きに何度か風呂へ行き、その日は入浴デーになった。夜はあまりアルコールをとらずおとなしく寝て、翌日は、
「さあ今日は肉体を使いますよ」
「何をさせる気だ。怖ぇな」
「あそこに行くんだろ」
承太郎が窓のところに立ち、親指で「あれ」を指した。観覧車が回っているのが見える。
さすがに浴衣で遊びに行くわけにはいかないので各々持ってきた服に着替え、外へ出た。足元のタイルが色分けされており、ピンク色の道を辿ってゆくと遊園地の入り口に着いた。
花京院は既に購入してあったフリーパス用のリングを、かいがいしく一人一人の手首に巻いてやった。皆なんとなく笑顔になってその作業を眺めている。
腕を振り上げ、
「さあ、遊ぶぞ」
おう、と声が揃った。イギーはアヴドゥルの肩に乗っている。
「片っ端から全部乗ろうぜ」
「当然だ」
「よし、まずはカートだな」
各々の色のカートに乗ってスタートする。
「どけどけどけ。うぉっ」
「抜かせんぞ」
「こいつ、運命の車輪か。奈落に突き落とすぞ」
「てめーら邪魔だぜ」
「承太郎、拳で殴るのは反則だよ」
ダンゴになった脇を紫色のカートがすっ飛んで行く。
「わはは〜。ワシが一番乗りじゃー。あ、一番になったやつに皆がおごるということにしよう。決定」
「一番になりながら言うんじゃねーよ」
「次はコーヒーカップか」
「ちょっとこれはスリルがなくてなあ。お子様向けでよ」
「そう思うんなら俺と一緒に乗ろうぜ、ポルナレフ」
「え?いいけど」
承太郎はにやりと笑って中心のハンドルをぐっとつかむ。瞬間、星の白金が出て、
「オラァ!」
ハンドルをぐぅん!と回した。瞬間、カップがちょっと宙に浮く勢いで回転し、次いでどすんと着地した。
「何やっとるんじゃ」
「壊すなよ」
見るとポルナレフは両手で顔を覆って突っ伏しているし、承太郎は片手で口を押えて、
「…今のは俺もちっと驚いたぜ」
「バカか、君は」
次はいよいよ絶叫マシンのコーナーだ。いくつかあるが、
「最初はフリーフォール系だね」
「う。垂直落下か。俺ちょっと苦手なんだよな」
「そうか。いい悲鳴が聴けそうだな」
「花京院このS野郎が」
ごんごんごんごんごん
「う〜。上がってく〜。ひー、うわー、くぅー」
「ポルナレフ、足をばたばたさせるなよ」
「だってよー。あー、ちびりそう」
ごんごんごん…がくん。
「くるぞくるぞくるぞくるぞ、ぎゃー…」
「うわああああああああああああああ」
「…お前の悲鳴でかき消されたぜ」
「悪夢でも見たんじゃねーのか」
「ぜいぜいぜいぜい」
「前髪があらぬ方向を向いてるぞ花京院」
「次に乗る乗り物の方向を教えてくれてるんだろうぜ」
「スプラッシュ集中して後頭部に放つぞ」
「でもまあ、前髪が指している方向へ行ってみるか」
「ジョースターさん…」
前髪が示しているのはコークスクリューだった。
「冒険好きな前髪だな」
「もう前髪はいいですから」
その後も前髪の導きによってフライングカーペットに乗り、パイレーツに乗り、鉄骨番長もどきに乗り、皆喉が嗄れ足腰が大分ガタついたところで、
「じゃあ次はあそこに行きますか」
でーん。寂れた洋館が建っている。
「え、なんだあれ」
「お化け屋敷だな」
「に、日本のお化け屋敷っておっかないんだろ。なんかこう、心理的にぐっとくるていうか…うわあ〜暗い!」
「しがみつくな、ポルナレフ」
「だっておっかねえんだよ承太郎。お、置いていくなよ!ひしっ」
「しがみつかないでください、ポルナレフ」
「そんなこと言うなよ花京…ぎゃああああ、何かあったかくてやわらかいものが顔に!顔に!チャリオォーーーッツ」
「スタンドを出すな!そりゃイギーだ」
「臭ぇー!こいつ屁こいたぞ」
「密室だというのに。逃げ場がないぞ」
施設内に悪臭を充満させ、備品をいくつか破壊して外へ出てきた。
「ああ、もうヘロヘロだぜ」
「じゃあ次は穏やかなやつにするか」
「え、なに」
「部屋から見えたやつじゃ」
観覧車だ。客があまりおらず空いていて、下に着くともう係員が手招きして、
「すぐ乗れますよ!」
促され、慌てて数名ずつ乗り込んだ。
ふうと言いながら花京院が座る。アヴドゥルとイギーが向かいに座っていた。一個前のゴンドラを見やると、ジョセフとポルナレフがどっちに座るでもめていて、後ろのゴンドラを見ると承太郎が一人でふんぞり返って外を眺めていた。
「結構大きな観覧車だな」
「そうですね」
「我々が宿泊している宿はあれか?」
「あれの隣りじゃないですか」
「そうだった。ヨーロッパのお城だったな。中は畳だが」
笑い合ってから、
「楽しんでもらえてますか」
「勿論だ。おれはほとんどこういうものには乗ったことがないからな。とても面白い」
とても素直にはっきり言われて、花京院は嬉しくなり、そうですか良かったと言って笑った。
その顔に相手も微笑して、
「改めて、久し振りだな花京院」
「お久し振りです、アヴドゥルさん。お元気そうで何よりでした」
「お前が企画したのか、この遊び倒しプランを」
「意外でしたか?」
うなずいて、
「最初はな。ポルナレフあたりが計画しそうな内容だと思ったが、しかしいいプランだ。皆でしっかり楽しめるからな」
「いろいろ考えたんですけどね。アヴドゥルさんなら京都や奈良の方が喜ぶかな?とか」
「ああ。いろいろ考えた末にこうなったのはよくわかる」
あっさり言ってもらえてまた嬉しくなった。そうなんだ。この人は、そしてあの旅の仲間たちは、僕のことをよくわかってくれている。つまらない意地とか見栄とか、譲れないところとか、必死になるものとか、全部だ。
イギーが窓枠に手を掛けて外を眺めているのを見ながら、
「あの後、イギーはまた一人で古巣のニューヨークに戻ったんですね」
「ああそうだ。今回日本へ来る時、おれが寄って連れてきた」
野良犬がわさわざいる路地裏へ足を踏み入れると犬たちが皆うーと唸ってきた。別に怖くはないが、無駄な殺生をする気もない。大声で呼んだ。
『イギー!居るか。おれだ』
ややあって、一軒の空き家のドアがぎーと開き、中からイギーが出てきて、はすかいにこちらを見る。
よう。なんだ。
あの再会を思い出すと、更に昔のことも思い出した。ふと頬のゆるむアヴドゥルに、花京院が、
「昔、イギーを捕まえたのはアヴドゥルさんなんですよね」
イギーはつまらなそうな表情になってプイとそっぽを向き、また外を眺めた。
「そうだ。…本当は、おれが負けるところだったのだ」
アヴドゥルが微笑をたたえながらそう言い、花京院はえっと驚いた。
「どういうことです」
「あの時、おれはイギーを袋小路まで追い詰めた」
生憎と風の強い夜だった。
こんな時に下手なスタンドの使い方をすると、一区画簡単に灰にしてしまう。自分のスタンドはそれだけの力がある。故に、いかに強くなるかは、同時にいかに制御できるかと対になっている課題だ。それが子供の時から自分に課せられたことだった。
『さあおとなしくしてもらおうか。おれと一緒に来てもらうぞ』
小さな犬は不敵に笑って、
勝手に決めてんじゃねえよ、炎のスタンド使い。俺は誰の言うこともきかねえぜ
魔術師の赤の手から炎が長く尾を引いて犬に襲い掛かった。本体の犬が背後に飛び退りながら愚者が前に出る。砂は炎にぶち当たり、分かれ、更に大きく広がって押し包んだ。
『なにっ』
出力を制限しながら俺と戦うなんざ、なめられたもんだぜ
そのまま一気に押し切られ、アヴドゥルは地面に叩き付けられた。すさまじい力で頭がくらくらする。必死で上半身を起こしたところに、上からのしかかってくる巨大なスタンドが見えた。
あばよ
やられる。
瞬間そう思った。その時、右手から絶叫が上がった。見ると、どこぞの浮浪児が2人、抱き合って悲鳴を上げていた。戦いの現場にのこのこ来合せてきた、その頭上に、先刻戦いのさなかにヒビの入った建物の2階のベランダ部分が落下してくるところだった。
危ない、とアヴドゥルが叫んだ時、自分目掛けて襲い掛かってきていた砂のスタンドが突如進行方向を変えた。後ろ足で地を蹴って跳び、すんでのところで浮浪児の頭上に滑り込み、落下物を防いだのだった。
浮浪児がぎゅーっとつぶっていた目を開け、自分たちが砂まみれになっているが無事なことを確認し、すぐ側にベランダの残骸が砂に埋もれているのをびっくりして見ている。それらを見届けてから、アヴドゥルは手を伸ばし、目の前の犬を抱え上げた。
犬はチッという顔で抱え上げられ、
ざまぁないぜ。わかった。観念してやる。
そんな唸り声を上げた。
「浮浪児はその界隈に住み着いていた兄弟で、時折、野良犬の王と食べ物を分け合っていたやつらだったらしい。同志というのか、子分というのか、知らないがな」
アヴドゥルはそう言ってイギーの背を撫でた。イギーは面白くなさそうに唸っている。
「イギーはこの話をされるのが好きではない。本当は自分が勝っていたということを差し置いても、自分が人間を庇って捕まったなどとは知られたくないのだ」
わかってんならべらべらしゃべるなよ
「悪かったな。でもいいだろう。花京院になら?」
イギーはちらりと花京院を見てから、
まあな
またフイと向こうを向いた。
花京院は胸がいっぱいになって、ジーンとするようなちょっぴり可笑しいような気持ちで、アヴドゥルとイギーを見つめてから、手を伸ばしてイギーを抱え上げ、ぎゅっと胸に抱いた。
「ホリィさんの言うように、君は本当に誇り高い砂の戦士だ。ああ、君が大好きだイギー」
やめろ。放せ。苦しい
イギーはじたばたっと暴れて花京院の手からぽんと飛んだ。2人は顔を見合わせて笑い合った。
ちょうど一番高いところに来ていた。ふと見ると前のゴンドラの2人が透明なアクリル板にべったりと顔をつけ、おーいと言いながら手を振っている。笑顔で手を振り返し、それから後ろのゴンドラを見ると、外を眺めていた承太郎がこっちの視線に気づき、口の端だけで笑って見せた。
翌日も再び外に出て、「体調の悪い方はいませんか」と一応聞いたが、一様に首を振られた。
「よし。では、今日は別口のアミューズメントに行ってみましょう」
「なんだそれは」
黄色のタイルを踏んで進み、門をくぐる。最初にあったのは巨大迷路だった。
「途中4か所のチェックポイントがあるので、全部のハンコを押して最後の出口に出てくださ〜い」
受付嬢に言われてポルナレフはハーイと良いお返事をし、張り切って中に入ると、
「絶対に俺が一番だぜ!」
「負けませんよ」
「わしじゃわしじゃ」
3人がドドドドと突っ込んでいった。承太郎とアヴドゥルがその背を見送ってから、ぼちぼちと出ていく。
分かれ道まで来た。
「俺はこっちへ行ってみるぜ」
「じゃあおれはこっちだ。じゃあな」
承太郎はしばらくウロウロし、チェックポイントに出てハンコをつき、またウロウロする途中でアヴドゥルと出くわした。
「どんな感じだ」
「まあまあだ」
お互いのチェック用紙を見ると、ちょうど逆のチェックに印が押されている。
ふーん、と苦笑してまた別れた。
途中で物見やぐらのようなところに登れたので行ってみるとイギーが昼寝をしていた。下を見下ろすと、あちこちを必死で駆けずり回っている連中が見えた。
あそこをこう行ってこう行けばいいのか、と思っていると「おい承太郎!」と呼ばれる。ポルナレフが汗をたらして、
「第2チェックポイントはここからどう行けばいいんだ。教えろ!」
「自力で探せ」
「そんなこと言うなよ!」
「承太郎」
今度は逆の方から声がかかる。花京院がお愛想の笑顔を浮かべて、
「第3チェックポイントはどっちの方か、そこからわかるかい?」
「わからねえな」
「エメラルドスプラッシュー」
「やめろ」
「じょうたろ〜う。おじいちゃんにヒントをくれんかー」
無視して降りてしまった。
結局一番早く出てきたのは承太郎で、次がアヴドゥルだった。それきり出てこない。
うーむ、ここはさっきも来たところだ。見分けのつかない壁なのに妙にそのことだけはわかる。
待て。落ち着け。そうだ、迷路は片方の壁に手をつけてずっと歩けば必ず出られるっていうじゃないか。でも今からそれをやるのか。ちょっとそれは。
「あっそうか、法皇で道を探せば一発じゃないか。…でもいかにもそれはチートだな。やるべきではない。うん」
よし。出ろ、法皇、と気合を入れた途端、
「ズルは無しだぞ花京院!」
「法皇は駄目じゃ花京院!」
あとの2人の絶叫がどこからか聞こえた。
「…なんでわかったんだろう」
こすずるい学生はチェッと言い、それからまたうろうろに戻った。
それから残り組は随分かかって出てきた。3人ともちょっとやつれている。
「やっと来たか」
待っていた方の2人はコーラを飲んでいた。ずりぃ、てめーらばっかり、僕も飲みたい。わしも!わしも!と騒ぐ連中に、
「方向オンチどもが何言ってやがる」
「待ちくたびれたぞ」
「さ、さあ、次はあの建物に入りますよ」
汗をさりげなく拭きながら言う。そこはボーリング場だった。
「よぉーし、俺さまの華麗な投球を見せてやる」
「わしの腕前を見てから言うんじゃな、そういうことは」
「一度もやったことがないんだが」
「僕が教えてあげます。簡単ですよ」
「簡単だぜ」
「へっ、ド素人と学生は別レーンで遊んでろ。ここは直接対決と行こうぜジョースターさん」
「のぞむところじゃ」
というわけで自称玄人の2人とその他の3人のチームで球を転がし始めた。
かこーん!いい音がして王冠がピカピカ光っている。
「ストライーク!こういう時に言ってくれなくちゃなあ」
「なかなかやるのう。じゃが、」
かこかこかこーん!
「ボーリングでこのわしに勝とうなどとは、10年は早いんじゃあないかな?」
「なんか言ってるな」
「気にしないでいいです」
「最初は両手で投げるといい」
承太郎が球を両手で持って、ずかずか出ていくと、そのままゴロゴロと転がした。球は真っ直ぐ転がっていってピンをなぎ倒した。
「おお、なるほど」
出ていって言われたようにゴロゴロゴロとやっている。
「8ピンだ。いいですね」
ゴロゴロゴロ。かこーん
「やったやった、スペアですよアヴドゥルさん」
「ははは。なかなか面白いな」
「でしょう?うふふふ」
「フッ」
「和気藹々とやっとるのう」
「こっちは血を血で洗う戦いだぜ」
2ゲーム終わる頃には、アヴドゥルが片手で投げられるようになり、ポルナレフが手の筋をちがえ、ジョセフの腰がじんわりと痛くなってきて、学生2人は、
「違うよ承太郎。ストライクの時は次の次の回まで足すんだ」
「だから、この時点で7ピンてことはこことここで出るだろうが」
「だから違うっ。これとこれでいいんだよ」
「違う!てめー、どこで覚えてきた」
「君こそ」
計算の仕方でちょっともめた。
「さあ、入って入って」
花京院に促されて一同はどやどやと部屋に入った。ここはカラオケボックスの一室だ。
「おー広いじゃねえか、ミラーボールもあるぞ」
「これも日本が世界に誇る文化だな」
花京院はマイクのスイッチを入れて、「あー。あー」と言いながらボリュームのスイッチを回して調整した。
「歌う前にまず注文しようぜ!えーっと」
「俺はたこ焼きが食いたいぜ」
「わたしは枝豆が食いたい」
「わしは鳥のから揚げが食いたい」
「僕は…手っ取り早くパーティセットにしましょう」
「酒は?」
「飲み放題にしてきたから、何でも頼んでいいよ」
「っしゃー!」
間もなくテーブルの上には山のようなジャンクな食い物と酒のグラスが並んだ。
「かんぱーい」
「わしらは気づくと乾杯してるな」
「まあいいじゃないですか」
「そうじゃな」
イギーは既に勝手に食っている。手羽先の骨がぽんと飛んできてポルナレフの頭に刺さった。
「さて、何歌うかなー。このちっこい奴で曲を探せばいいのか?あ、英語対応のボタンがあってまだ良かったぜ」
言いながらポルナレフがリモコン機械をいじくっている。
「ちょっと待ってください、ポルナレフ。あのですね」
手を伸ばして制し、ちょっと照れ笑いをして、
「僕から皆さんにお願いがあるんです」
「え?」
「なんだ」
皆きょとんとして花京院を見る。
「僕から、皆さん一人一人に、リクエスト曲があるんです。まずそれを歌ってくれませんか?」
「えっ」
各々の表情で驚いて目をぱちくりさせたり曖昧に笑ったり無表情で当惑している。
「だめですか?」
ジョセフが困惑気味に首を振って、
「いや、だめってことはない。知ってる曲なら別に構わんが、」
「それなら大丈夫です」
口の端をきゅっと微笑ませて、
「あの旅の間に『この人はこの曲を知っている』ってはっきりわかっている曲をお願いしますから」
「全くなんという用意周到さじゃ」
苦笑して、うなずき、
「わかった。花京院は今回の旅行の功労者じゃからな。お願いをきいてやろうじゃないか」
「ありがとうございます。皆も」
「変な歌うたわせんなよー」
猥歌だろうと平気で歌いそうな男がそんなことを言う。
「大丈夫です」
にっこり笑って、
「じゃあ、最初は、アヴドゥルさんにお願いします」
「わたしか」
「お。なんだなんだ。レゲエか?」
「レゲエではないな。はいマイク」
「うん」
受け取ってスイッチを入れるがまだなんとなく当惑している。花京院は微笑んだままピッピッ、と曲のボタンを押した。
ぽつりぽつりとしたピアノの前奏が入る。有名な出だしだ。ジョセフと承太郎はすぐに曲名がわかった。
アヴドゥルも「あの曲か」という顔になり、頭の中で歌の流れを追い、それからふと何かに気づいた表情になった。が、何も言わない。
まだわかっていない一人が、ピーチフィズをすすりながら、なんか聴いたことあるなと思った。柔らかく寂しげな、だが温かいメロディーだ。なんだっけ。不思議と懐かしい気持ちになる曲だな。
アヴドゥルが口を開いた。
真っ直ぐで低く、深い声で、
わからず屋め
いい加減で目を覚ませ
いつまで塀の上で座り込んでいる?
頑固な奴だ
また説教だ、と思った。まったく、あの旅の間、何度こいつに食らっただろう。
歌の歌詞だというのに、まるで、何度も何度も言われた小言のように、それはすんなりとポルナレフの耳に届き、心に落ちた。
お前にはお前の事情があるだろうが
お前が良かれと思ってやっていることは
お前を苦しめることもあるんだ
ずきりと心臓が痛んだ。
故郷を出て3年間、妹の仇を討つことが自分にとって唯一無二のことだった。顔もわからない男のもとに一直線に向かう、それを妨げるものはなんだって振り払って前へ進んだ。後悔なんかしたことがなかった。
あの日までは。
お前の悼み、お前の餓えは
懐かしい思い出ばかりを連れてくる
妹のことを、思い出そうとして思い出したことなどなかった。
まるで当たり前のように、テーブルクロスを換える誰かの手や、濡れた髪をぬぐう誰かの手に重なって現れ、追い求め手を伸ばすと違う誰かになっていた。
折に触れ、どうしようもなくこみ上げてくるものは何だろう。ガラスを伝う雨のしずくのように、ぬぐってもぬぐっても俺の心を流れ落ちてゆくのは、悔恨か、自責か、
まだ恋も知らない歳で無残に踏みにじられた妹への挽歌だろうか。
自分の肩を濡らし続ける雨は冷たく決して止まない。本当は今だって止んではいない。わざわざ口に出して言わないだけだ。
自由?ああ自由でいいなんて言う奴らも居るが
お前は世界をひとりぼっちで歩いている囚人だ
『俺はいつだって一人だ。ずっと一人でやってきたんだ。これからだってそうだ』
そのことを、寂しいなんて思ったことはなかった。一人が寂しいなんて、思ってる暇はない。他人とは情報を得るためにその一時関わるだけの存在で、相手のために自分の何かを切り売りするような気はない。そんな暇はない。相手にだってそんなものを要求する気はない、誰かに命がけで関わられるなんてことは。ああ冗談ではない。どうして。
迷惑なんだよ。
花京院はあの時のポルナレフの顔を思い出していた。
僕は知ってる。この男の、一番内側の顔を。
僕は決して忘れないだろう。
泣くのを堪えているようなポルナレフの頭を、アヴドゥルの声が、まるで、軽くこづくみたいに、
困った奴
いい加減目を覚ますんだ
塀から降りてここに来い
心を開け
ああだから、説教すんなよ。頭撃たれて背中刺されてまで、俺のことを心配するんじゃねえよ。どうしようもないおせっかい野郎が。
とうとううつむいてしまった。
雨は降るかも知れないが
お前の上にいつか虹がかかるだろう
ふと、肩に降りかかる雨が暖かくなった気がした。相変わらず雨は降り続いているが、空は明るい。空気が暖かくて、雨に降られても風邪を引き込むことはなさそうだ。
いずれ小降りになり、雲の切れ間から陽が射すだろう。きれいな虹がかかって、見上げたらきっと妹が渡っていくのが見える。きっとだ。
お前は誰かに愛されるべきだ
手遅れになる前に
静かにそう締めくくって、ピアノが後を引き取り、曲が終わった。
誰も何も言わない。うつむいていたポルナレフが、仕方なさそうに口を尖らせ、拗ねた口ぶりで、
「…お前に頑固な奴って言われたかねえや」
そんなことを言った。目に涙が溜まっている。
まるきり誰かさんのことを歌ったみたいな曲だな、と突っ込まれるより先に、自分のことだと認めてしまっている。ジョセフは声を出さず笑って、
「手遅れになる前に、愛されて良かったじゃないか」
「誰にだよ」
「ここにいる全員にじゃ」
なあ?と見渡されて、花京院が笑いながら勢いよくうなずき、自分も涙目で、
「勿論です。愛してるよポルナレフ」
マイクのスイッチを切りながらアヴドゥルも微笑んでうなずき、
「わたしもお前を愛している」
「わしもじゃ!愛してるぞォポルナレフ!」
「承太郎。君は?」
「言わずもがなだ」
「駄目だよ、ちゃんと言葉で言わないと。照れ屋なんだから」
「てめえ」
苦笑して、肩をそびやかし、
「愛してるぜポルナレフ」
イギーがジャンプしてポルナレフの頭に乗っかるとアギアギ言いながら毛をむしった。
まったく、バカな奴ほど可愛いって言うからな。ジュテームだ。
「やめろ、やめろ!畜生、何なんだこいつら」
オイオイと泣き出したポルナレフの頭を、皆でよってたかってげしげし叩いてやった。
「で、次は君にお願いします。ポルナレフ」
「おれ?」
涙を拭き洟をブーとかんで、ライムハイを一杯飲んだところでマイクを渡される。花京院はまたリモコンを取ってピッピッと入力した。
今度もまたピアノのイントロで始まった。軽やかで華麗で、そしてなにより、とてもとてもロマンチックなメロディーラインだ。今度はポルナレフだけ曲の背景がわかって、花京院を見た。
うん、というようにうなずいて、
「苗字つながりで」
早口の小声で言う。
「前にも言ったけど別に俺は親戚じゃねえぞ」
ささやいてから、おもむろに口を開いた。
俺を愛してくれ
どうか俺を愛してくれよ
俺はお前に夢中なんだ
なぜ、毎日俺の哀れな恋をからかうんだ
冒頭で繰り返される英語の一文以外はフランス語の歌だった。耳をくすぐるような喉で転がす発音、そしてのびやかで切なげなファルセット。つれない相手の前にひざまづいて切々と訴えているポルナレフの姿が見える。もう完全に口説きモードだ。
男3人はウヘェーという顔、花京院は嬉しくてたまらない顔をしている。
そんな外野にお構いなしで、更に熱烈に、懸命に、情感たっぷりに、
俺を愛してくれ
どうか俺を愛してくれよ
俺はお前に夢中なんだ
俺が苦しんでるのを見て
お前はそんなに楽しいのか
「ああそうか。ポルナレフか。ミッシェル・ポルナレフ」
間奏の時に呟いたジョセフに花京院がうなずいた。
「フランス語はとにかく、こういう風に聞こえるな」
「そうだな。いたたまれない気分だ」
2人がシブい顔で呟く。花京院は可笑しくてしょうがないが我慢した。
すっかりスイッチの入った本人はノリノリで、Cメロに入った。
お前の目はうんざりしきって
何も話しちゃくれない
ほんの少しの希望も持てやしない
なんだかもう、あちこちダニに噛まれたみたいに痒い。尻をもぞもぞさせながらそれでも大きな音は立てないようにと、それぞれイカの足をしゃぶっている。
こっちの苦悩などどこふく風で、更にオーバーアクションで、
でも俺は最後の望みをかけたいんだ
たとえ、たとえ、俺の命を
炎で焼き尽くさなければならなくても
「ん?」というフキダシがカラオケルームの天井付近に何個も上がった。
歌っている本人も歌ってしまってから「えっ」という顔になり、しかし歌は続くので変な顔のまま、
俺を愛してくれ
どうか俺を愛してくれよ
俺はお前に夢中なんだ
なのにお前はいつも
俺の哀れな恋をあざけっている
歌いながら、違う違うというように首を振っている。手も振っている。それがおかしくて皆半笑いになりながら、
「出会った時みたいだろう」
「ああ。初っ端からあいつ焼かれたからな。いや焼き尽くされたのか」
「お前、あいつの告白をからかったりあざけったりしたのか。可哀想に」
「そんなことをした覚えはありませんが」
澄まして言って、イカをくちゃくちゃやっている。ポルナレフはもうグギグギという顔で歯ぎしりし、それでも歌うところに来ると律儀に、
お前のあまりの冷淡さの前で、時々俺は
夜の中にとけてしまいたくなる
朝には確信をとりもどし
俺は自分に言うんだ
今日は全てが変わるかも知れないと
「今日は全てが報われると教えてやれ」
「そうじゃそうじゃ」
「さて、どうしたものだか」
「くすくすくす」
「〜〜〜〜〜!」
俺を愛してくれ
どうか俺を愛してくれよ
俺はお前に夢中なんだ
でも、お前の遠い冷たさは
俺の心を引きちぎる
「引きちぎると狂いもだえるんだろ」
「喜びでね」
「わたしにはそういう趣味も特技もない」
「てめえら、いい加減にしろ」
曲が終わったポルナレフがかんかんになって戻ってきた。途中まではあんなに乗りまくっていたのに、今では顔が真っ赤になっている。
「いいものを見せてもらえた。本当にありがとう」
「全く、へたな猥歌よりタチが悪いぜ」
「ポルナレフ」
アヴドゥルに声をかけられ、続きを言われるより早く、
「冷たくして悪かったなとか言ったらぶん殴る」
「いや。炎で焼いて悪かったな」
「やかましい〜!」
笑い声が起こった。
「なんか知らねえけどさっきから俺一人泣いたり吠えたり恥ずかしい思いしてばっかじゃねえかよ。花京院お前俺に恨みでもあるのか」
「恨みなんかないけど、必然的にこうなるんだ。次はね、君だ承太郎」
「俺か」
ここで言わずにいつ言うのか、という口ぶりで、
「やれやれだぜ」
呟くとマイクを持った。
「すぐに始まるから気を抜かないように」
勝手なことを言いながら花京院がリモコンを操作した。
出だし一発目で何の曲かわかった。承太郎の顔がいよいよ渋くなるのを一同は黙って見守った。
お前だけが、この世界が正しいんだと思わせてくれる
お前だけが、この闇を明るく照らしてくれる
ポルナレフの歌とはまた違うロマンチックさの、スローバラードだ。本当は1オクターブ高い。これも男声の裏声で聴かせる曲なのだが、承太郎は自主的に下げて歌っている。だがこれはこれで低音の魅力があって、なかなか耳に心地よい。うっとりする。
お前だけが、そうお前一人だけだ
俺をこんなにときめかせるのは
そして俺の心はお前への愛で満たされている
歌いながら承太郎の顔がなんともいえないゆがみ方をしているのを、花京院をはじめとする一同は相変わらず無言で見守っている。
下手なヤジを飛ばしたら星の白金のコブシで部屋の反対側、いや隣の部屋まで吹っ飛ばされるだろうから、ということもあるが、『こんなロマンチックなラブソングを歌っている承太郎の図』の邪魔をしたくないのだった。
お前だけが
俺を変えることができる
何故なら本当に
お前は俺の運命の相手だから
ああ、あの時。
僕は君に出会って、そして君にぶん殴られて気絶させられて、目を開けたら君の端整な顔が目の前にあって、君の両手が僕の顔を包みこみ、君の指が僕の額から悪魔の命令を引き抜いてくれた。
下手をすれば自分の命だって危ないというのに、まるで何も気負わず、出来そうだからやってみただけみたいな顔をしていた。
あの日から僕の全てが変わったんだ。そう思う。
君の道はただ一本、夜空に引かれた真っ直ぐな白金の道だ。それはわかっている。よそに目もくれず己の目指すところへ飛んでゆく星の道だ。
でも、僕の道が君の道に交わったのは、君の星に巡り会ったのは、運命だったと思っていいだろうか。どうだろう?
「いいんじゃねえの」
「!シーッ」
お前が俺の手を取ると、俺にはわかる
お前の魔法にかかっちまうって
お前は俺が夢に描いていた相手
俺のたった一人の相手、そう、
碧の目が自分を見つめて、ふっと細められた(気がした)。
お前だけだ
「ズキュゥゥゥン」
「なんだ今の音」
「いろいろと射抜かれた音だろう」
「前髪があらぬ方向を指しとるぞ」
「天国の方向じゃないですか」
ああ終わった終わった、という感じで承太郎がマイクを置くとどかどか戻ってきてどすんと座った。
「うむ、良かったぞ承太郎」
「うるせー」
「ホントによ。お前歌うまいな。狙った相手の前で歌えばイチコロだ」
「こいつみたいにな」
見ると花京院がもう、全身チェリー色になってぱくぱくしている。何事かうめいているようだ。耳をすましてみると、
「かっこいい…なんてかっこいいんだ。想像した以上だ。ああ、命の洗濯になった」
「何なんだ、てめーは」
カラオケのフロントでもらってきたウチワで赤くなった顔をぱたぱた仰ぎ、ようやく落ち着いて、では、とジョセフに向き直り、
「ジョースターさんにお願いします」
「わしがトリか。なんじゃろうな。いい湯だなとか、えんやーこーらやっと、とかそういう」
「日本のコミックソングではありません」
マイクを渡す。曲を入れて笑顔で待っている。
前奏が始まった。これもまたとても馴染みのある前奏で、そして彼ら全員にとって、通常の人間とは違う響き方をする単語の出てくる歌だった。
ジョセフもああ、と懐かしいものに出会ったみたいな笑い方をして、リズムをとり、やがて温かく力強い声で、
夜が来て、辺りが暗くなり
月の光しか見えるものはない
あの旅では、そういうことも沢山あったな、と一様に思う。普通なら寝ないような場所で何度も夜を迎えた。
砂漠や海で、砂や風やサソリを避けながら、そしてなによりもいつ襲ってくるかわからない敵に身構えながら、小さく丸まって寝た。
しかし、不思議と、つらかったという思いはない。何故なのか。
でも私はちっとも怖くない
お前たちがそばにいてくれるなら強くなれる
だから、いとしい人よ
私のそばにいておくれ
そうだった、必ずこのメンバーが側にいた。そして、ずっと昔からか、ごく最近からかは別としても、自分の側に現れ立つ彼らも、常に傍らに居てくれたのだ。
僕らは12人で戦っていたのと同じだ。…ジョースターさんの茨を人に数えるかどうかは微妙なところだろうか。なら、12体で戦ってきたのだ。
空が落ちてきても
山が海へとなだれ落ちても
比喩でなく、そういう思いも何度もした。地面が裂けた割れ目へ落とされ、灼熱の太陽に燻され、悪夢の中で殺されかけ、無数の刃や水や岩の攻撃や亜空間に襲われた。
でも。それでも、途中で引き返そうと思ったことはなかった。戦線を離脱して、自分の家へ帰ろうと、帰りたいと思ったことは一度もなかった。
そんなこと、するはずがない。
ここにいるのは、生まれて初めて、真に心が通い合った仲間だからだ。それが手に入った今、他のどんなものを欲しがる必要があるだろう?平和で安穏な暮らしか?そんなものは要らない。
ジョセフがあの旅の間中ずっと変わらず見せていた、陽気で大らかな笑顔そのままの歌声を更に大きく響かせる。
私は泣かない、泣いたりなんかしない
お前たちがそばにいてくれるだけで
強くなれる
だからいとしい人
私のそばにいておくれ
後奏がフェードアウトして静かに終わった。
ジョセフが「歌い切った」顔でニィと笑った。途端に、
「俺ぁ側にいるぜぇーッジョースターさん!」
「僕も側にいますジョースターさん!」
ポルナレフと花京院がドドドド詰めかけてジョセフを押し倒した。スピードワゴン2人組みたいな熱烈アタック攻撃に、ジョセフは笑いながらも段々、
「ギャフー。わっはっは、可愛い奴らめ。げふげふ。ひい」
「おいおい、ジョースターさんを潰すなよ」
「ダメだ。こいつら酔っぱらってやがる」
「ジョースターさーん」
「オーイオイオイ、オーイオイオイ」
「ちょっちょ、ちょ、ま」
「ジョースターさぁぁーん」
「………」
「おい!ジョースターさんが」
「白目になってるぜ」
「お前たちちょっと離れろ」
ジョセフを掘り出し介抱する。「大丈夫ですかジョースターさん」「いやなに大丈夫じゃ。げほげほ」とかやってる脇で感激組の2人がまだオイオイやっている。「俺ぁ、俺はよぉ、カンドーだぜ」「うんうん。そうだよねポルナレフ」「おい、お前ら、ちょっと黙れ」「そうだよな花京院!」「そうだよ!」「黙れ」
その後ようやく落ちついて、花京院は笑顔で涙を拭きつつ、
「皆さん本当にありがとうございました。夢がかなってとても嬉しいです。みんなとてもステキでしたよ」
「なにを勝手にまとめに入ってやがる」
「そういや歌ってないやつが約一名いるぜ」
「ああ、そうだな」
「きっとステキな歌声じゃろう」
「え」
ニコニコの裏に怒りのピキピキを含ませている者いない者さまざまだが、4人は一斉にリモコンをいじり始めた。
「な、何をしてるんです?」
「決まってるだろうがよ」
「てめーに歌わせる歌を探してるんだぜ」
「えええええ」
悲鳴を上げ、勘弁してくださいと訴えたがどこにも届かず、その後花京院はよってたかって変な歌を歌わせられた。スティングなんか入れてくれる人間は誰もいない。猥歌やコミックソングは勿論だが、何故か女の歌が多かった。
花京院は本当に楽しかった。
酒を飲んで酔っ払って騒いだあと「おやすみ」を言う時も全員がそこに居て、目を覚ました時にもやはり皆が居る。
全員でプールにも行ってウォータースライダーで遊んで、着水してげほげほ言っているポルナレフの上に皆で次々に落下した。
わざわざ起き出して夜明けの空を露天風呂から皆で眺めた。
皆でプラネタリウムに行った。擬似的に作られた満天の星空を見上げて、小声で「あの旅の夜空は、これよりもっと星が多かったな」「そうだな」と言い合った。
皆で水族館に行った。「あれ、紅海で観た魚だ」「どれだ」と教え合った。
皆で踊りに行った。踊りが上手い者もヘタな者もかまわず踊り狂って疲れ果てて戻ってきて、休んでまた踊った。
皆でバーに行った。ポルナレフが「俺やってたことあるんだぜ」と言ったらカウンターの人が貸してくれたので、シェーカーを振って、一人一人にスタンドの名の、スタンドの色のカクテルを作ってくれた。「ほい、法皇の緑」と言ってテーブルを滑らせてきた、キラキラ光る翠色のカクテルは、甘くて、ちょっと薄荷の味がして、とてもおいしかった。「あれを弾いてもいいかな」と訊いてどうぞと言われジョセフが、バーの片隅にあるピアノを弾いて、皆で歌った。
このメンツで食卓を囲む風景はもはや名物になって、宿の人間も客たちも皆「あ、あのでかい人たちだ」という顔で見ている。もはやイギーも堂々と食っている。毎晩毎晩、同じ演歌ショーを眺めた。すっかり手拍子から合いの手まで入れられるようになって、「まるで専属盛り上げ係だな」と言って笑った。並んでいる料理も無論毎日同じだが、皆別に文句などは言わない。毎日、マグロの解体ショーを観て、マグロの切り身をもらってきて、皆で食べる。最後のしめは勿論チョコレートファウンテンだ。「何度食べても食べ飽きねえな!」「全くだ」という会話を聞きながら承太郎の顔が微妙にゆがむのを隣で眺めて笑う。
部屋に戻って皆でババ抜きをする。皆で七並べをする。皆でポーカーをする。皆で大富豪をする。勝つのは大体ジョセフか承太郎で、あとの3人は似たり寄ったりだ。たまにジョースターの血族の人間に勝つと他の2人から「エライぞ」「大金星だな」と誉められる。皆でウィンクゲームをする。「僕は絶対に顔に出しませんよ」と言った割に、鬼にウィンクされると顔が赤くなるので、皆「花京院が鬼でないことはわかった」とすぐバレた。
毎日楽しくて楽しくて息も出来なかった。
そして、一週間が過ぎた。
[UP:2014/09/18]
アヴドゥルが歌ったのはイーグルスの「デスペラード」ttp://www.youtube.com/watch?v=iDNtqy0zjJA
ポルナレフが歌ったのはミッシェル・ポルナレフの「愛の願い」ttps://www.youtube.com/watch?v=hOQtH0bKFq0
承太郎が歌ったのはプラターズの「オンリーユー」ttp://www.youtube.com/watch?v=5p2k55F-uag
ジョセフが歌ったのはベン・E・キングの「スタンドバイミー」ttps://www.youtube.com/watch?v=BTCfQ6Bb8QE
歌詞の語調は勿論いじってます。省略した部分もあります。でもどれも本当に各人に歌って欲しいと思う。
実は承太郎は最初、ハウンドドッグのフォルテシモを歌ってたんですけどね。「愛が全てさ 今こそ誓うよ」拳振り上げる承太郎(笑)。
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